トランシーバー・アプリ「ゼロ」はなぜ南アフリカで普及したのか
音声でやりとりするスマホ向けのトランシーバー・アプリが、地域のコミュニケーション・アプリへと進化を遂げている。自然災害や暴動などの危機的状況下で頼れるアプリとしての地位を固めつつあるようだ。 by Tanya Basu2021.07.31
在任中の汚職を問われた南アフリカのジェイコブ・ズマ前大統領に6月29日、15カ月の禁錮刑が言い渡された。ズールー人として史上初めて国の最高権力者となったズマ前大統領は、熱心な支持者を抱える一方、経済の停滞や民主主義の弱体化の原因はズマ政権の腐敗にあるとの批判も多い。
ズマ前大統領は自身の無罪を主張し、79歳で刑務所に入ればそのまま死んでしまいかねないとして、7月7日まで出頭しかった。数時間のうちに、抗議行動や大規模な略奪が報じられ、特にズマ前大統領の出身地であるダーバンでは、支持者がズマ前大統領の屋敷の周りに陣取って警察に対抗する事態ともなった。この暴動により、少なくとも215名の死者と2500名以上の逮捕者が出ている。
アミス・ゴサイのような南アフリカ人にとって、現地で何が起きているのかを把握するのは難しいことだった。ワッツアップ(WhatsApp)のチャット欄は投稿であふれ、混乱の様相を呈していた。そんな中、ゴサイは地域コミュニティのワッツアップ・グループで、「ゼロ(Zello)」というアプリで近隣地域の自警団のようなものに参加するよう呼びかける投稿を目にした。トランシーバー・アプリであるゼロは、抗議活動のコミュニケーション・ツールとして急速に利用が広まっている。
ツイッターのDMで取材に応じたゴサイは、「ゼロは、地域住民への注意喚起や不安の解消にとても役立ちました」とコメントした。
https://twitter.com/Raylen_10/status/1414723403819462667
https://twitter.com/theshyapricot/status/1416254200804257793
ダーバン出身のゴサイは、ズマ前大統領逮捕の混乱を受けてゼロをダウンロードした18万人の1人だ。ゼロのユーザーはチャンネルに登録することで、互いに会話できる。音声ファイルがリアルタイムで送信され、チャンネルを聴いているすべての人が送信された音声ファイルにアクセスできる。
ゼロはも …
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