KADOKAWA Technology Review
×
1回目アストラゼネカ、2回目ファイザー接種でも高い効果=英新研究
CDC | Unsplash
Mixing and matching different vaccines seems to work

1回目アストラゼネカ、2回目ファイザー接種でも高い効果=英新研究

アストラゼネカ製ワクチンを1回接種した後、2回目としてファイザー製ワクチンを接種した場合の免疫反応は、アストラゼネカ製ワクチンを2回接種した場合よりも高くなることが新たな研究でわかった。 by Cassandra Willyard2021.07.01

オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンの接種後、4週間後にファイザー/バイオンテック製ワクチンを接種した人の免疫反応は、オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンを2回接種した人よりも強く、ファイザー/バイオンテック製ワクチンを2回接種した人とほぼ同等だったことが、6月28日に公開されたプレプリント(査読前論文)で報告された。

すでに異なる種類のワクチンを組み合わせて接種している国にとって心強いニュースだ。例えばスペインでは、オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンを1回接種した60歳未満の人に、まれに起こる血液凝固による血栓への懸念から、2回目の接種ではファイザー製ワクチンを提供している。また、今回の新しいデータにより、ワクチンの不安定な供給に直面しているその他の国も柔軟に対応できるようになるはずだ。

オックスフォード大学の小児科医で、今回の試験の主任研究員であるマシュー・スネイプは、「試験されたワクチン接種スケジュールはすべて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して有効だと言えると思いますし、有効性を期待できます」と言う。しかしスネイプ医師は、大規模な第3相試験で検証された接種計画よりも混合接種の方が好ましいとまでは言えないと付け加える。「依然として、直接的な証拠に基づいて実際に効果があることが分かっているワクチン接種スケジュールに従うことが基本だと考えています」。

このデータは「コム・コブ(Com-Cov)」という研究の一環として得られたものだ。50歳以上の800人を超える参加者を4つのグループに無作為に分け、2つのグループには治験通りのワクチン接種、つまり同じメーカーのワクチンを2回接種し、残りの2つのグループには2つのメーカーのワクチンを1回ずつ接種した。この研究は、同じワクチンの2回接種よりも、異なるワクチンを組み合わせて接種した方が結果が悪くなるかどうかを調べるために実施された。つまり、コム・コブでは、ワクチン接種により新型コロナウイルス感染症を予防できるかどうかではなく、このような接種計画が抗体とT細胞の反応にどのように影響するかを評価している。

5月に公開された研究では、異なるワクチンを組み合わせて使用しても安全であることが示されたが、異種混合接種では副反応が大きかった。今回の論文では、4週間の間隔をあけて2回接種した463人の免疫反応のデータを発表している。研究チームは、12週間の間隔でも試験しており、いずれの接種計画でも強い免疫反応が導かれたようだ。異種混合接種では、オックスフォード大学/アストラゼネカ製の2回接種よりも強い免疫反応が導かれた。実際、オックスフォード大学/アストラゼネカ製の後にファイザー/バイオンテック製を接種されたグループは、オックスフォード大学/アストラゼネカ製を2回接種されたグループよりも抗体レベルが9倍高かった。しかし、ファイザー/バイオンテック製の2回接種は、1回目にファイザー/バイオンテック製を接種した異種混合接種を含め、他のすべての接種計画よりも優れていた。

今回の研究では、オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンを2回接種した場合が、最も抗体レベルが低かった。しかし、試験が4週間の接種間隔で実施されたことをスネイプ医師は指摘する。オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンの本来の接種間隔は8〜12週間であり、4週間ではない。複数の研究では、さらに長い間隔をあけた接種の方が効果が高いことが示されている。新たに発表されたプレプリントでは、45週間の間隔で最も高い抗体レベルが検出されている。このことが、オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンの標準的な2回接種が最も弱い免疫反応を示した理由かもしれない。

研究チームは、12週間の間隔をあけて2回接種したグループのデータを7月以降に発表したいと考えている。また、免疫反応の持続時間を評価し、さらに、モデルナ(Moderna)とノババックスのワクチンを組み合わせた試験もする予定だ。これらのデータは、ブースター(追加免疫)が必要な場合、保健当局がどのワクチンを提供すべきかを決定するのに役立つ可能性がある。「今回の結果からは、RNAワクチンへの切り替えには、抗体の面で実際にメリットがあることが示されました」とスネイプ医師は言う。

人気の記事ランキング
  1. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
  2. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
cassandra.willyard [Cassandra Willyard]米国版
現在編集中です。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る