金星は地獄かもしれないが、死んだ惑星とは呼ばないでほしい。最高471°Cの表面温度と地球の100倍の表面気圧の中、金星は地質学的にまだ活動中であるかもしれないことを示唆する、新たな研究が発表されたのだ。このニュースは、金星にはかつて生命が生息していた可能性がある(または、まだ生息できる)と考える人々にとって励みとなるものだ。
地球の岩石圏(リソスフェア:地球の地殻とマントル上部)は、動き回って互いに衝突する「プレート」でできており、その結果、山や深海溝が形成され、火山活動や地震活動が発生する。この地殻活動はまた、炭素循環においても重要な役割を果たす。炭素循環とは、炭素が生態系に放出されて再吸収されるプロセスであり、大気中の二酸化炭素の量を調節することで、これまでずっと地球を涼しく快適に保つのに役立ってきた。
これまでのところ、金星で同様の地殻活動が観測されたことはない。しかし、地殻活動の可能性を除外することはできなかった。金星の科学的観測をするのが難しいためだ(厚い雲が金星表面を覆い隠し、着陸する宇宙船はみなおそらく数時間で溶けてしまう)。だが、6月21日に米国科学アカデミー紀要(PNAS:Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された新たな調査結果によると、科学者チームは、金星での新しいタイプの地殻活動の証拠をついに発見したと述べている。
科学者チームはこの結果を導き出すのに、1990年から1994年に金星を周回し、レーダーを使って表面の地図を作成したマゼラン(Magellan)探査機による観測記録を使用した。マゼラン探査機が発見した特徴は以前分析されたが、新たな調査では、岩石圏の大きなブロック構造を示す表面の変形を認識できる新たなコンピューターモデルを使っている。これらのブロックは、それぞれがアラスカ州ほどの大きさで、池や湖に浮かぶ流氷のようにゆっくりと互いにぶつかり合ってきたと思われる。
この活動は、現在地球で見られるタイプのプレートテクトニクスとはかなり異なる。しかし、確認されれば、それでも金星の内部に熱流と溶融物質が存在する証拠となるだろう。そうした証拠は、これまでに観測されたことがない。論文の執筆者らによると、「流氷」パターンは、太古代(40億年前から25億年前)の地球の地質との類似点から、金星がまだ地球に似ていた時期の初期プレートテクトニクスからの過渡期である可能性を示唆しているという。
この動きは「金星の低地全体で見られ、グローバルテクトニクスのこれまでに認識されていなかった型である証拠となります」と、コンロンビア大学の地球研究所(Earth Observatory)副主任研究員であり、今回の研究論文の共同執筆者であるショーン・ソロモン博士は述べる。
この研究結果は、米国航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)によって最近承認された新たな金星ミッションに沸く人々の興奮を、さらに煽るばかりだ。ソロモン博士は、3つのミッションすべて(NASAの2つとESAの1つ)が「論文で述べた考えを試験するための重要なデータ」を提供できることを、チーム共々望んでいると述べる。これらのミッションを打ち上げる準備が整うのは、2020年代の終わり近くになる。よって、今後数年間でこの興奮が衰えないことを期待しよう。