停滞するジャガイモの品種改良、有性生殖で変革に挑む育種家
現在私たちが食するジャガイモのほとんどは、50年から100年前に生み出された品種である。その意味で、ジャガイモの品種改良は停滞しているが、自然発生した染色体数が半分の品種を使うことで、有益な形質を持つ新たな品種を生み出そうとしている育種家がいる。 by Peter Imle2021.06.17
現在栽培されているジャガイモの品種の大多数は、50年から100年前に生み出されたものだ。このことは、ジャガイモ産業と新品種の作出の難しさについて多くを物語っている。私たちの農場は、主に西海岸とフロリダのレストラン向けに、レッドポテトを専門に育てている。レッドポテトの一番の売りは、傷のない色鮮やかな赤い表皮だ。
私たちは種芋農家であり、外部から材料を購入することはない。ごく小さな芽を試験管で育てるところから始めて、それを温室に移し、小さな塊茎を作る苗木に成長させる。システム全体が密閉空間内にあるので、ジャガイモの塊茎に土や虫が仲介する病原体が付着することはない。またこの仕組みにより、従来の品種と並行して、同じシステムを通じて新しい実験的な品種を集める機会も得られるため、毎年新しい品種の評価をしている。私たちは自社で品種試験をして、新品種の実験をしている。
私は楽観的なたちなので、自分たちが次に世に出す品種が昔からある何種類かにとって代わるものであると、いつも思っている。だが、15年間この仕事をやってきたが、そんな品種はまだ1つも見つかっていない。
私個人はいつも、より鮮やかな赤色のジャガイモを目指して評価をしている。ここ3、4年のあいだ取り組んでいた2つの試作系統がもう少しで完成しそうだったが、昨春に植え付けようとしたら、冬の間にかなりの量が種腐れを起こしてしまっていた。エンドユーザーにはとても好評な品種だったが、残念ながら保存には向かないようだ。
ジャガイモの品種を改良する上で最大の障壁は、商用ジャガイモが4倍体作物であること、つまり、染色体を4対持っているという点だ(トマトやトウモロコシなど、他の主要な作物の多くは2対の染色体を持つ2倍体である)。なぜこれが問題かというと、4倍体のジャガイモを2種類掛け合わせた場合、子孫には非常に多くの遺伝的差異が生じ、望ましくない突然変異の隠れ場所になってしまうからだ。そのため …
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