「農薬のルームランナーから降りる」(1985年11月/12月号)
DDT(有機塩素系殺虫剤)は、害虫駆除の新時代の幕開けとなったが、同時に新たな環境意識も生み出した。社会が害虫駆除のために化学物質に依存し始めると、DDTは問題の元凶とされた。化学物質が開発されるとすぐに、人間の健康や環境に対する影響についての疑問が表面化し始めたのだ。
これらの懸念には十分な根拠があることが証明されている。昆虫の多くの種が、もはや農薬の効能に反応しない。世界での農薬使用は劇的に増加しているが、害虫によって失われる作物の割合は減少していない。昆虫は毎年、アジアの稲作の3分の1を食い尽くし、米国では植物病害により果物や野菜の農作物の損失は20%を超えようとしている。疑いようもなく、単により多くの化学物質をふりまくことは、答えなどではない。
「食品照射で医者いらずになる?」(1997年11月/12月号)
米国では毎週、200人近くの人々が食物を原因とする病気で亡くなっている。そのほとんどが子どもか高齢者だ。この春、クリントン大統領は「食品を安全に保つために最先端のテクノロジーを使用する新たな手段」を求めた。クリントン大統領が選び出したテクノロジーの1つが、食品照射だ。
「トラウマになるような大腸菌感染のアウトブレイクがなければ、食品業界が照射殺菌に真剣に取り組むことはないでしょう」とタフツ大学・食品政策研究所のジェームズ・ティロットソン所長は述べる。危機がなければ、消費者は照射殺菌された食品を要求しようとも考えないだろうし、食品照射を研究している企業は活動家グループによる攻撃に晒されてしまう(だろう)。「誰もそのような種類の注目を浴びたくはありません。たとえ消費者のために最善を尽くしていたとしても」とティロットソン所長は言う。
「遺伝子組み換え食品が必要になる理由」(2014年1月/2月号)
植物科学者は、作物に干ばつへの耐性を持たせたり、収穫を高めるために注入できるような魔法の遺伝子などない、と慎重に発言する。病気への耐性を持たせるのでさえ、通常、複数の遺伝学的変化が必要になるのだ。しかし、彼らの多くは、遺伝子工学は用途が広く、不可欠な手法であるとも言っている。「遺伝子工学は断然、論理的なことです」と英国のセインズベリー研究所の科学者であるジョナサン・ジョーンズは言う。農業生産に対する今後の圧力は、「(略)貧しい国々の何百万もの人々に影響を与えるでしょう」とジョーンズは述べる。カリフォルニア大学デービス校の植物科学者、エドゥアルド・ブルムヴァルトは、現在の農業生産レベルなら、世界を養うのに十分な食料があるという。しかし、「人口が90億人に達したら? 絶対無理でしょうね」。