新型コロナ「デルタ株」の感染力を高めているのは何か?
「デルタ株」と呼ばれるインドで発生した変異株が、すでに英国で優勢になっている。研究者たちは、その高い感染力の秘密を明らかにするべく取り組んでおり、いくつかの仮説が浮かんでいる。 by Cassandra Willyard2021.06.16
英国で新型コロナウイルス感染者数が増加している。急速な感染拡大を引き起こしている変異株が、その原因である可能性が高い。現在デルタ株と呼ばれているB.1.617.2 は当初インドで発生したが、世界保健機関(WHO)によればその後62カ国に広がっている。
デルタ株は米国ではまだ稀な存在だ。米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が先週、ホワイトハウスで開いた記者会見によると、デルタ株は全症例の6%を占めるに過ぎないという。しかし英国では、このデルタ株がアルファ株として知られる B.1.1.7 をすばやく追い越し、優勢な変異株になっており、6月21日に制限を緩和するという英国の計画を頓挫させるおそれも出てきた(日本版注:その後、ロックダウン解除の4週間延期が発表された)。
症例の総数はまだ少ないが、公衆衛生当局はこのデルタ株を注意深く観察している。英国のマット・ハンコック保健・社会福祉相は、デルタ株はアルファ株に比べ約40%感染しやすいと報告したが、科学者たちはいまだに正確な数値を特定しようとしている最中で、その範囲は30%から100%と推定されている。また、こうした科学者たちは何が感染力を高めるのかを理解する研究にも取り組んでおり、まだ多くの答えは出ていないが、いくつか仮説はある。
あらゆるウイルスは複製する際、遺伝子コードにおいて突然変異を起こす。新型コロナウイルスも例外ではない。こうした突然変異の多くは全く影響を及ぼさない。しかし、中にはウイルスの構造や機能を変える突然変異もある。ウイルスの遺伝子配列に関する変異を特定するのは簡単だ。しかし、こうした変異がウイルスの拡散方法に対し、どのような影響を与えるのかを理解するのは難しい。まずウイルスが細胞に侵入するのを助けるスパイクタンパク質を調べるのが適切だ。
デルタ株が細胞に侵入する方法
細胞を感染させるには、新型コロナウイルスが体内に入り、細胞表面の受容体に結合する必要がある。このウイルスにはキノコの形をしたスパイクタンパク質が点在しており、このスパイクタンパク質がヒト細胞のACE2と呼ばれる受容体に結合する。この受容体は、多くの細胞型に見られ、そのなかには肺を覆う細胞もある。錠 …
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