米国の労働生産性が転換点、20年ぶりの上昇気流がやってきた
米国労働統計局は、2021年第1四半期の米国の労働生産性が5.4%上昇したと発表した。この伸びは一時的なものではなく、今後の好景気の到来を告げるものだと考えられる。スタンフォード大学デジタルエコノミーラボ所長による特別寄稿。 by Georgios Petropoulos2021.06.14
多くの米国人にとって、この15年間は大変な時期だった。だが今、人々を勇気づけるような好転の兆しが見えている。
高い生活水準の重要な要因である生産性の成長は2006年以降、わずか平均1.3%にとどまっていた。これは前の10年間の半分以下に過ぎない。しかし、米国労働統計局は6月3日、2021年第1四半期の米国の労働生産性が5.4%上昇したと発表した。さらなる朗報として、この伸びが一時的なものにとどまらず、今後の好景気を告げるものであると信じる理由もある。1990年代に匹敵するか、もしくはそれを上回る生産性の上昇の到来である。
2001年から2021年第1四半期までの労働生産性の年間成長率
楽観的な見方の根拠は私たちの研究に示されている。ほとんどのOECD諸国は、今まさに生産性のJカーブの最低点を通り過ぎている最中にある。人工知能(AI)などのデジタル技術の進展が原動力となって、生産性は今、上昇気流に乗っているのだ。
生産性のJカーブには、画期的な技術が導入された後、最初は生産性がゆっくりと伸び、数年後に急上昇するというこれまでの傾向が表れている。私たちの研究や他の研究では、大きな恩恵を得るには、技術だけではほとんど不十分であることが示されている。新たなビジネスプロセスやスキル、その他の無形資本への大型投資を、技術投資と組み合わせなくてはならない。蒸気機関やコンピューターといった多様な画期的技術によって最終的に生産性が向上したのは、そうした投資の組み合わせがあったからこそだ。例えば、米国の工場に電気が導入された後、生産性は20年以上伸びなかった。生産性が上昇に転じたのは、電気によって機械 …
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