ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)は5月22日、パイロット2人を乗せた準軌道飛行に成功した。同社が準軌道飛行に成功したのはおよそ2年ぶり、通算3回目。2021年には4回の有人飛行ミッションが予定されており、その1回目となる。
ヴァージン・ギャラクティックの「スペースシップ2(SpaceShipTwo)」の2号機である「VSSユニティ(VSS Unity)」を積んだ大型貨物機は、米国東部標準時5月22日午前10時34分、ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカ(Spaceport America)を離陸した。VSSユニティは午前11時26分に貨物機から切り離されエンジンに点火し、最大高度89.2キロメートルまで上昇。米国空軍と米国航空宇宙局(NASA)が宇宙の始まりと定義する80キロメートルに達した(国際的に認められている宇宙との境界である高度100キロメートルには達していない)。その後、VSSユニティは地上に戻り、わずか17分ほどでスペースポート・アメリカの滑走路に着陸した。なお、今回のミッションではNASAの「飛行機会プログラム(Flight Opportunities program)」の実験装置も運ばれている。
ヴァージン・ギャラクティックが宇宙に人を送り込んだのは2019年2月以来のことだ。2019年のミッションは同社が宇宙空間へ到達した2回目のミッションであり、パイロット2名に加えて乗客1名を初めて乗せた画期的なものだった。たが、水平尾翼が損傷したため、安全性の見直しと改修が必要になった。5月22日の試験飛行は改修後初となり、実際に宇宙飛行で試す機会となった(2020年12月にも試験飛行が予定されていたが、電磁干渉のため飛行途中で中止されている)。
今回の飛行は、ニューメキシコ州を発着地とする初の宇宙飛行でもある。同州は米国で3番目に人類を宇宙へ送り出した州となる。ヴァージン・ギャラクティックは、年間400便の打ち上げを目標として、すべての商用飛行をスペースポート・アメリカを発着地とする予定だ。
多くの点で、2021年はヴァージン・ギャラクティックにとって運命を左右する年になる。ヴァージン・ギャラクティックは宇宙旅行の実現を目的として、2004年にリチャード・ブランソンによって設立された。だが、開発の遅れや多くの失敗に悩ませられてきた。例えば、1人のパイロットの命が奪われた2014年10月の墜落事故は、まだ人々の記憶に新しい。ヴァージン・ギャラクティックが年間400便を達成するには、同社が迅速かつ着実に、そして安全に飛行できることを証明する必要がある。
その目的を達成するため、ヴァージン・ギャラクティックは今年さらに3回、有人飛行ミッションを計画している。最初はパイロット2人と、社員4人を乗客として飛行し、次はヴァージン・グループのリチャード・ブランソン会長を乗客として飛行する。最後はイタリア空軍を乗客とした商用飛行だ。同社が初めて顧客を宇宙に連れて行くことになり、200万ドルの収益につながると期待されている。ヴァージン・ギャラクティックはまた、今年新たに発表したスペースシップ3(SpaceShipThree)の滑空飛行にも挑戦する可能性がある。これらすべての活動を経て、早ければ2022年にも商業運航を実施する準備が整うはずだ。
一方、宇宙旅行市場をめぐるヴァージン・ギャラクティックの競争相手であるブルー・オリジン(Blue Origin)は7月20日、初の有人飛行ミッションを実施する。乗員6人を宇宙船ニュー・シェパード(New Shepard)に乗せて準軌道へ向かう予定だ。