米国航空宇宙局(NASA)は本当に、2024年に人間を再び月に送り込むつもりなのだろうか? 2024年という期限はトランプ政権がNASAに発した命令だったが、その実現可能性はますます低くなっている。バイデン政権はまだ目標を変更してはいないが、専門家の多くはバイデン大統領がNASAに時間的猶予を与え、期限を2020年代後半に設定し直すと見ている。
だが、問題がある。期限を2024年とする方が、実は安全な選択肢なのかもしれない。学術誌「ソーラー・フィジックス(Solar Physics)」に発表された新たな研究によると、2020年代の後半に宇宙天気現象(放射線や超高エネルギーの太陽粒子線の嵐)が起こるリスクが高まっているという。これが本当だとすると、2026年から2029年の間の月への有人飛行ミッションに伴う危険は高くなる。もしNASAが再び人間を月に送ることを真剣に検討しており、かつ宇宙飛行士をできる限り安全に守りたいのならば、2026年よりも前にミッションを実施できるよう取り組みを加速するか、2020年代が終わるのを待った方が賢明かもしれない。
「宇宙天気は、宇宙時代の黎明期には明らかに見落とされていました。しかし、地上にもたらす影響と宇宙探査の両方の点で、ますます真剣に考慮されるようになっています」と、英国のレディング大学の宇宙物理学者で、今回の研究論文の筆頭著者であるマシュー・オーウェンズ教授は話す。「この研究では、特に月探査と関連してというよりも異常な宇宙天気一般に目を向けることが目的でした。さまざまな研究結果をまとめて、今後11年の周期で起こる異常な宇宙天気の確率を予測してみて初めて、月探査への影響が明らかになりました」。
そう、宇宙には天気が存在する。太陽の表面はガスとプラズマを噴出しており、荷電粒子(陽子、電子および重イオン)を時速数百キロメートルもの速度で太陽系内の空間に放出している。これらの粒子は地球や月にものの数分で到達する可能性がある。地球の磁場がこうした荷電粒子から私たちを守っているが、それでもこれらの粒子は地上の電子機器や電力網を焼き切り、GPSや電気通信サービスを管理する重要な人工衛星を破損する可能性がある。
宇宙天気は、月に向かったり、月面基地で生活したり働いたりしようとする宇宙飛行士にとって、極めて危険なものとなり得るものだ。生命維持システムや電力が停止するかもしれないし、太陽活動によ …