ちょうど、ほぼ1年前のことになる。ソフトウェア開発者たちによって、パンデミックを食い止めるためのテクノロジーが慌ただしく開発された。当時は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者の近くにいたかどうかを知らせる追跡アプリに焦点が当てられていた。現在、話題はデジタルワクチン証明書に移った。「ワクチンパスポート」と呼ばれることも多いこのデジタル証明書は、スマホ上で動作し、本人がワクチン接種済みであることを表示するように設計されている。
直近では、5月17日に英国国民健康サービス(NHS)がイングランドで新たに発表した、出入国の際に使用するデジタル証明書が挙げられる。同証明書について今分かっているのは、以下のとおりだ。
専門家たちはすでに、このNHSのワクチン証明書が現在の範囲を超えて拡大するかどうかに注目している。エイダ・ラブレス研究所(Ada Lovelace Institute)のイモージェン・パーカー副所長は、パブや店舗などに入る際にパスを提示しなければならないというアイデアにはすでに反対の声が上がっていることを指摘する。「5月17日の導入が、より広範な使用の前兆であるかどうかを監視することが大事になります」とパーカー副所長は言う。「ですが、政府はとても慎重に歩んでいるようですので、それは歓迎すべきことだと思います」。
現在開発中のワクチン証明書は、このNHSアプリだけではない。欧州周辺では、各国政府がスマホベースのワクチン・パスポートの開発に取り組んでおり、中にはすでに一般公開されたものもある。その一例が、欧州連合(EU)自らが3月中旬に提案したデジタル「グリーン証明書」である。フランスの「トウスアンチコビッド(TousAntiCovid)」という接触追跡アプリは、先月アップデートされ、ワクチン接種証明書や検査結果が陰性であることも表示できるようになった。ただし、他国が今後、これを受け入れるかどうかは不明だ。そうした中でイタリアのイノベーション大臣は、同国の曝露通知アプリ「イムニ(Immuni)」を改良してワクチン証明書を追加するかもしれないと述べており、ドイツ政府の関係者も、6月末までに自国製ワクチン証明書を導入したいとしている。
欧州以外の地域では、状況はこれよりさらに複雑だ。イスラエル政府は2月に「グリーンパス」を導入。シンガポ …