1日100万人超感染か インド、新型コロナ変異株で深刻な危機に
新型コロナウイルスの変異株が、インドで猛威を振るっている。公式発表によると1日当たりの感染者数は35万人を超え、死者は3000人に達する勢いだ。しかし、研究者が計量モデルで分析した結果、1日当たりの感染者数の実数は100万人単位に達している可能性が高いという。世界各国、そしてWHOは支援を始めたが、どれほどの効果が見込めるだろうか。 by Charlotte Jee2021.04.28
吸入用酸素など、生命維持に欠かせない医療補給品がインドに届き始めた。インドでは今、新型コロナウイルスの感染者数が指数関数的に増加し、世界で最も深刻な危機を迎えている。26日の感染者数は35万2991人、死者数は2812人となり、新規感染者数の世界記録を5日続けて更新した。実際の数字はこれよりはるかに大きいことはほぼ確実だ。ワシントン大学の保健指標評価研究所の研究者による計量モデルからの推測では、インドにおける実際の新規日次感染者数は100万人単位に達している可能性が高い。
現状は悲惨だ。インドの大部分の医療機関は崩壊してしまった。集中治療室が満床となり、新規患者を受け入れることができなくなってしまったのだ。多くの病院で吸入用酸素の在庫が切れた。つまり患者は息苦しさと戦っている。駐車場は、大規模な火葬場になってしまった。
世界中からインドに支援が届き始めた。世界保健機関(WHO)は「当機関に可能な限りのあらゆること」をすると約束した。テドロス・アダノム・ゲブレイェソスWHO事務局長はインドの状況を「悲痛という言葉では表現しきれない」と描写した。世界保健機関は、吸入用酸素や医療用品、そして複数の野営病院をインドに送ろうとしていると明かした。さらに、現地の病院関係者と協働する2600人の専門家を派遣する準備を進めているという。
インド外務省は27日に英国から届いた人工呼吸器と酸素濃縮器の画像をツイートした。ほどなくしてサウジアラビアやアラブ首長国連邦も同様の補給品をインドに送ることになっている。
米国は、アストラゼネカのワクチンを作るための原料、人工呼吸器、防護器具、検査キットをインドに送ると約束した。加えて、備蓄しているアストラゼネカ製ワクチン6000万回分の一部を送ることも決定している(アストラゼネカのワクチンがインドの規制当局によって承認されているが、安全性についての再検証を済ませた後になるという)。
こうした支援は有用ではあるが、複数の科学者は、このような支援はインドが陥っている危機に「小康」をもたらすに過ぎないと語っている。ウイルスの新しい変異株B.1.617 が発生したため、現状はさらに悪化しているかもしれない。B.1.617は新型コロナ感染症ウイルスの、より感染力の強い変異株2種類と類似している。一つは南アフリカの変異株で、もう一つはカリフォルニア州の変異株だ。そして専門家によると、インド政府があまりにも早期に行動制限を緩和してしまったことも大惨事の原因となっている。加えて、ワクチン輸出を優先したことも現状を悪化させている。いまだにインドは再度の全土ロックダウンに踏み切っていない。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。