世界40カ国のリーダーが参加する4月22日の気候変動サミットで、米国は2030年までに二酸化炭素排出量を2005年水準の半分に削減する方針を発表したる。これは、オバマ政権の目標のほぼ2倍に相当する。2014年にオバマ大統領は、2025年までに二酸化炭素排出量を2005年水準を26~28%下回るようにするとしていた。米国は、今回の方針を発表することで、インドや中国などの主要排出国が、2021年11月に英国グラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)までに同様の目標を立てることを期待している。ホワイトハウスが出した声明は次のとおりだ。「米国は、ただ座して待つことはしません。対策の遅れによる代償は甚大であるため、わが国は今すぐ行動を起こす決意をしています」。
世界の平均気温は既に、産業革命以前より1.2度上昇しており、2016年のパリ協定で定めた1.5度未満に抑えるという目標値にますます近づいている。気候科学者たちは何年も前から、過去の炭素排出によってもはや深刻な気候ダメージは避けられないと警告してきたが、破壊的な地球温暖化を回避するわずかな希望はまだ残されている。
バイデン大統領の目標は実現可能なのだろうか。今のところ、米国がこの新たな目標をどうやって達成させるのかについて明確なロードマップはない。しかし、ホワイトハウスは今年中に、業界別の削減案を発表することになっている。2030年までの目標を達成するためには、実質的に、経済のほぼすべての部門を徹底的に見直し、石油、ガス、石炭の使用を大幅削減する必要がある。具体的には、2兆3000億ドルを投じて、自動車や発電所など特に排出量の多い業界への大胆な政策を実行し、クリーンエネルギーと気候テクノロジーのイノベーションを促進させる考えだ。
米国の有力な非政府団体である環境防衛基金(Environmental Defense Fund)のナット・キオヘイン会長は、米国の新たな目標は「気候危機の切迫した事態に対応するものです。科学に即し、世界的な大志を後押しし、より力強いクリーンな経済への移行を加速させます」とツイートした。
一方で、この目標値すら十分ではないと主張する環境保護団体もいる。若い世代が率いる サンライズ・ムーブメント(Sunrise Movement)の共同創設者であるエヴァン・ウェバーは、次のように述べている。「米国が2030年までにこれよりもはるかに高い目標を達成しなければ、私たちの世代と、気候危機の矢面に立たされている数十億人にとっては死刑宣告されたも同様です」。
今週に入り、米国に先立って、英国は2035年までに排出量を1990年比で78%削減するとの目標を発表。欧州連合も現在の排出量を2030年までに55%削減するとしている。日本は4月22日に、2030年までに2013年度比で排出量を46%削減する案を発表した。