ディープマインド(DeepMind)の「アルファ碁(AlphaGo)」や、チェスをするIBMの「ディープ・ブルー(Deep Blue)」以降に登場したさまざまな人工知能(AI)の中で、人々の心を確実に捕らえているAIがある。「GPT-3」だ。
GPT-3は、サンフランシスコを拠点とする研究所であるオープンAI(OpenAI)が開発し、2020年に発表した「大規模言語モデル」である。深層学習を使うアルゴリズムであり、言葉や語句を繋ぎ合わせるように、何千冊もの書籍やインターネット上の多くのテキストで訓練されている。人間が書いたテキストを不気味なほどのリアリティで模倣する能力を持ち、GPT-3の登場は真のマシン・インテリジェンスへの道を切り開く重要な節目になるのではないか、と評されている。
GPT-3は何ができるのか? 以下に例を挙げよう。太字の部分は人間が与えた文章で、それに続くのがGPT-3が作成した文章である。
ご覧のように、GPT-3はあたかも人間が書いたかのような、複雑な文章を作成できる。例として挙げた文章には文化的言及や、科学者がどのように反応するかという、実際にありそうな説明が含まれている。このように言語を使用できる機械が重要な理由はいくつかある。まず、言語は日常の世界を理解する上で必要不可欠だということだ。人間はコミュニケーションをとるため、考えを共有し概念を説明するために言語を使う。言語をマスターしたAIは、その過程で世界をより良く理解できるようになるはずだ。
また、大規模な言語モデルには、多くの実用的用途もある。より流暢な会話が可能な、より良いチャットボットの開発に役立つし、与えられた文章に基づいて一般的な記事や物語を生み出すことができる。いくつかの文を要約したり、それについての質問に答えたりもできる。GPT-3の利用は現在のところ招待制だが、すでに起業のアイデアを生むツールや、シナリオをAIが書くアドベンチャーゲームなど、いくつものアプリに使われている。
2020年に登場した大規模な言語モデルは、GPT-3だけではない。マイクロソフト、グーグル、フェイスブックはそれぞれ自社のモデルを発表している。しかし、GPT-3は抜きん出た万能選手だった。面白いフィクションや哲学的な論争から、プログラムのコードまで、何でも書けるように見えるからだ。2020年の夏、人々がGPT-3を試し始めると、ソーシャルメディアは瞬く間にその用途の …