ロシアのサイバー・セキュリティ企業「ポジティブ・テクノロジーズ(Positive Technologies)」のハッカーたちは、疑う余地なく優秀だ。評価の高い研究成果を発表し、最先端のコンピューター・セキュリティの欠陥に目を配り、ネットワーク機器から電話信号、電気自動車の技術までさまざまな脆弱性を発見してきた。
だが米国の情報機関は、モスクワに本社を置き、世界中にオフィスを構える10億ドル企業である同社が、実際にはこれらの表向きの活動以外にも取り組んでいると結論づけている。
ポジティブは、ロシアの情報機関を支援したとして、米政府が4月15日に制裁を科したテクノロジー企業のひとつだ。ロシア政府が米国にもたらす脅威に対処するため、ジョー・バイデン大統領は国家緊急事態を宣言した。しかし、財務省が公表した制裁に関する詳細では、ロシアにおいて同社が果たしているとみられる役割のほんの一部にしか触れられていない。
MITテクノロジーレビューが入手した情報によると、米国当局は、ポジティブがロシアのスパイに攻撃的なハッキングツールや知識、さらには作戦を提供する主要な企業だと内々に結論づけている。同社はロシアの地政学的目標達成を支援する民間企業やサイバー犯罪者集団からなる連合体の一部とみられており、米国はそうした企業や団体を直接的な脅威とみなす傾向を強めている。
ポジティブは表向きは、多くのサイバーセキュリティ企業と何ら変わらないように見える。スタッフはハイテクなセキュリティに目を配り、新たな脅威に関する研究を発表し、デスクの上には「いつも前向きに!」と書かれた可愛らしいオフィス・サインを掲げている。ポジティブとロシア政府とのつながりの一部は公にされており、同社はロシア国防省との20年にわたる関係をはじめとする、防御的サイバーセキュリティに関する18年にわたる専門的実績を誇っている。しかし、これまで報道されてこなかった米国情報機関のアセスメントによると、ポジティブは兵器としてのソフトウェア・エクスプロイト(ソ …