DARPA、キノコ製補給ドローンの開発に資金提供
物資を送り届けた後、数日後には土に帰るキノコ製ドローンの開発に、DARPAが資金を提供している。へき地や紛争地帯に医薬品等を運び、回収せずに済むので運用コストも安価で済みそうだ。 by Michael Reilly2017.02.02
片道飛行の任務に志願する人はあまりいないだろう。ありがたいことに、人間の代わりのドローンが誕生した。
米国国防先端研究計画局(DARPA)の助成金を得て、アザーラボ(Otherlab=本社サンフランシスコ)が厚紙製ドローンの試作品を作った。ドローンは紛争地帯やへき地向けに、医薬品や電池、通信装置などを空中投下できるよう設計されている。
ドローンはグライダー式で、着陸地点の設定後、貨物輸送機等の航空機から投下される(大型ドローンから投下する実験も実施された)。内蔵の小型電子回路がドローンを操縦し、目的地に向かわせる。ただし、積載量を最大化するように設計されており、モーターは内蔵しておらず、電池も燃料も不要だ。
ドローンはすでに、アマゾンの有料会員に商品を配達したり、ルワンダのへき地に薬を運んだりするために活躍している。米国防総省もさまざまな用途の可能性を試すため、ドローン編隊を実験中だ。しかし、完全に使い捨てで、自己分解するドローンのアイデアは史上初だ。DARPAのWebページでは「イカロス(ICARUS)」 プロジェクトとして、任務終了後すぐに「跡形もなく消えてしまう」ドローンを望む、とある。
今回の試作品はDARPAの要件を満たさないが、アザーラボでイカロス・プロジェクトを担当する技術者のスター・シンプソンは、厚紙を使ったのは単に設計が成功したことの証明だという。最終目標はドローンの機体を菌糸(キノコ類)の繊維で作ることだ。
エアー・アンド・スペース誌の取材に応じたシンプソンは、予備実験の結果「菌糸にさまざまな胞子を付着させ、ドローンの投下直前に胞子を活性化させるのは、実際に可能だとわかりました。胞子は成長し、文字通りドローンを食べてしまうはずです。5~6日後には、機体を分解してしまうでしょう」と述べた。ドローンを制御する電子機器は、DARPAの別の計画により、使い捨てドローンに適合する自己破壊型の電子回路の開発に資金が提供される。
アザーラボは風変わりな研究で有名だ。再生可能エネルギーから空気注入型ロボットまで、あらゆるものを手掛けている。使い捨てドローンプロジェクトに関するプレスリリースで、軍用輸送機C-130を利用すれば、1回で数百機のドローンに補給品を積み、カリフォルニア州と同じくらいの広さの地域にドローンをばらまけると発表している。
今までのところ、アザーラボのチームが試験したのは最大積載量1kgの機種だけだ。だがシンプソンは、大型化して翼長約2.4m、最大積載量10kgのドローンも作れるという。
(関連記事:Air & Space, Recode, “飛行中のF/A-18から103機の自律ドローン編隊射出に成功,” “ドローンによる医薬品配送 米国3州で認可か?,” “アマゾン初のドローン配達、利用可能なのは近所の二人だけ”)
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クレジット | Image courtesy of Otherlab |
- マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
- マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。