新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、ニューヨークのネイルサロンが閉鎖を余儀無くされたときでさえ、アラセリは働き続けた。ネイリスト歴10年以上のアラセリは、新型コロナが猛威を振るう中でも、顧客の自宅を訪問し、家に入ってネイルにマニキュアを塗っていた。2020年春、ワクチンはまだなかったが、アラセリには収入が必要だった。健康保険に入っておらず、感染した場合に病院からの請求額が高すぎて支払えないことはわかっていたが、それでも働かなくてはならなかった。
「ビクビクしながら出かけていました。でも同時に、お金が入ってこないと、自分や子どもたちがどうなるかわからないと感じていました」。アラセリは電子メールにこう記している。
33歳のアラセリは、ニューヨークにおいて、ほぼラテン系やアジア系移民の女性で占められている業界の一員だ。パンデミックの前でさえ、ネイルサロンの労働者は自分たちの仕事の厳しい条件と戦わなければならなかった。長時間にわたって有害な化学物質を吸い込んで過ごし、しばしば明白なサービス残業に直面していた。
しかし、新型コロナウイルス感染症は、アラセリのような労働者をさらに不安定な立場に置いた。労働者階級の有色人種が多くを占めるサロン労働者は、驚くべき感染率に直面している。ニューヨークのネイルサロン労働者の29%が、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性であったと発表されており、これはニューヨーク市民全体の約3倍もの割合だ(さらに9%が、ウイルスに感染している疑いがあるが、確認するための検査を受けられなかったと述べている)。とにかく、サロン労働者は安全に生計を立てていける状態を保つ上で大きな壁に直面しており、その状況は米国のパンデミック対応に巨大な亀裂があることを例証している。
スケープゴートにされ、行き詰まって
カリフォルニア州では、2020年春に新型コロナウイルス感染症の症例数が急増し始めたときに、ネイルサロンの労働者(多くの場合ベトナム人かベトナム系アメリカ人)が非難された。人種差別主義者の反感が頂点に達したのは、ギャビン・ニューサム州知事が、ネイルサロン業界がカリフォルニア州での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のアウトブレイク発生源であると主張したときだ(活動家によると、私的な会議で州知事室は主張を撤回したという)。その間、ネイルサロンは閉鎖と再開の急激な浮き沈みを乗り切るのに苦労してきた。
こういったストレスはすべて大きくなっている。「カリフォルニア州ヘルシー・ネイルサロン・コラボラティブ(California Healthy Nail Salon Collaborative)」のプログラム・コーディネーターであるトニー・ヌエンによると、ネイル労働者たちの延滞家賃はどんどん膨らみ、仕事は減っている。特に年配の女性は職場に呼び戻されないのではないかと心配しており、他の者はワクチン接種を受けていないため危険だと感じていても、ノーと言う選択肢がないことを心配しているという。
「巨額の借金を抱えて仕事に戻る人々がいます」と述べるのは、非営利団体「アディカール(Adhikaar)」のキャンペーン・コミュニケーション・マネージャーであるプラタナ・グルンだ。アディカールは、ニューヨークでネパール語を話すネイルサロンのスタッフと連携している。「『仕事に戻らなくてはなりません。子どもたちを養わなくてはなり …