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ハーバードの地球工学チーム、スウェーデンでの気球打ち上げを中止
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Harvard scientists suspend geoengineering research project in Sweden

ハーバードの地球工学チーム、スウェーデンでの気球打ち上げを中止

ハーバード大学の地球工学研究チームは、諮問委員会の勧告に従い、2021年夏に予定していたスウェーデンでの最初の気球打ち上げを延期することに決めた。同委員会は、研究チームがスウェーデンの一般市民と討論の場を持つまでは、予備的な機器テストも含めて打ち上げを延期すべきだとしている。 by James Temple2021.04.02

大方の予想を裏切り、ハーバード大学の地球工学(ジオエンジニアリング)研究プロジェクトの諮問委員会は、同プロジェクトの研究チームが2021年夏に予定していたスウェーデンでの最初の気球打ち上げを延期するよう勧告した。

最初の打ち上げの目的は、成層圏において、推進力を備えた気球に搭載する機器とソフトウェアを評価することだった。続く打ち上げでは、少量の粒子を放出し、太陽地球工学のリスクと可能性を探求することを研究チームは希望している。具体的には、硫酸塩や炭酸カルシウムなどの化合物を上空に散布して太陽光を散乱させ、地球温暖化を緩和するという、物議を醸しているコンセプトの検証である。これらが実現すると、成層圏で実施された地球工学関連の最初の実験となる。

しかし、諮問委員会は、研究チームがスウェーデンの一般市民と討論の場を持つまでは、予備的な機器テストも含めて、打ち上げを延期すべきだと決定した。ハーバード大学の気候科学者で同研究チームのメンバーであるデビッド・キース教授によると、チームは勧告に従う意向だという。

この決定により、気球の打ち上げは2022年まで延期される可能性がある。当初の予定では2018年にも開始するはずだったプロジェクトが、さらに遅れることとなる。そしてまた、最初の打ち上げが他の場所で実施される可能性も浮上してきた。研究チームがスウェーデンのキルナにあるエスレンジ宇宙センターを選んだのは、スウェーデン宇宙公社が2021年の打ち上げに対応できるという事情もあったからだ。

さらに、スウェーデン宇宙公社側も自社のプレスリリースで、地球工学分野の専門家や諮問委員会、その他の利害関係者と最近話し合った結果、打ち上げの中止を決定したと述べた。

ハーバード大学が諮問委員会を設置したのは2019年のことだ。その目的は、研究チームが提案した実験について検討し、リスクを抑え、外部からの意見を求め、透明性のある方法で運営するための適切な措置を講じられるようにすることにあった。

諮問委員会は声明文の中で、スウェーデンのパブリック・エンゲージメントの専門家と協力し、討論の場を設けてくれる組織を探すプロセスを開始したと述べた。

「この取り組みは、当委員会がスウェーデン国民や現地の視点を理解し、スウェーデンにおける機器テスト飛行について情報に基づいた迅速な提言をする助けになるでしょう」と諮問委員会は述べた。「スウェーデンにおけるこの取り組みはまた、提案された粒子放出飛行に関する当委員会の審議や、増加している地球科学研究の公的ガバナンスに関する研究や実践にも役立つでしょう」。

研究プロジェクトの主任研究員であるフランク・ケーチュ教授は、声明文の中で次のように述べた。「諮問委員会は、現地の人々を広く含むスウェーデンでの強固なパブリック・エンゲージメントに基づいて機器のテスト飛行について最終的な勧告をします。それまでは、スウェーデンにおけるテスト飛行を延期する必要があるという同委員会の意見を、研究チームは完全に支持します。パブリック・エンゲージメントのプロセスで意見に耳を傾け、今後の実験の参考にする予定です」。

この数週間のうちに、複数の環境団体や地球工学分野に批判的な人々が、スウェーデン政府職員やスウェーデン宇宙公社の責任者たちに対して研究プロジェクトの中止を求めていた。

グリーンピース・スウェーデンや、バイオフューエルウォッチ(Biofuelwatch)などの団体は、「太陽地球工学は過激な結果をもたらし得るテクノロジーであり、危険であり、予測と管理が不可能です」という声明を発表した。「危険すぎて使えないだろうと考えられているテクノロジーをテストし、実験することは、どんな理由をもっても正当化できません」。

MITテクノロジーレビューは、ハーバード大学の研究チームがこの実験で調べたいことを取材した特集記事を2月に掲載した。

「私の本心をお伝えすると、実際に地球工学の手法を実施せざるを得ない状況に陥らないことを心から望んでいます。地球工学はとても恐ろしいアイデアであり、実施したら何か悪い事が起こるだろうと今でも思っているからです」とケーチュ教授は語った。

「しかし同時に、リスクが何であるかをより深く理解することは、とても重要だと考えています」とケーチュ教授は付け加えた。 「この実地研究において私が最も興味を抱いているのは、(気候変動の)リスクを大幅に減らすことができる物質が存在するとしたら、それは何かということです。これについては知っておくべきだと思います」。

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MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。
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