米国のアマゾンの倉庫で、初となる労働組合の結成の是非を問う重要な投票が実施され、3月30日から開票作業が始まった。これに先立ち、アマゾン従業員を名乗る新しいツイッターアカウントが複数登場し始めている。プロフィールにはディープフェイク写真が使用されており、アマゾンの労働環境を過度に弁護する、思わず笑ってしまうような内容をつぶやいていた。実在の人物のようには見えなかったが、世間には混乱が広がった。一連のツイートは本当にアマゾンが仕掛けた、反労組を目的とした恐ろしいソーシャルメディア戦略だったのだろうか? そうでないことはほぼ確実だが、こうしたコンテキストでのディープフェイクの使用は、より懸念されるトレンドが世間に広がっていることを示している。
ディープフェイクが使われたプロフィールについて以前にも見聞きしたことがあるという感覚を抱いたとしたら、それには理由がある。アマゾンは2018年、自社倉庫の労働環境に問題はないと世間に宣伝するために、ある活動に着手した。倉庫にパソコンを何台か設置し、少人数の従業員グループが使うツイッター・アカウントを立ち上げたのだ。グループの名前は「アマゾンFCアンバサダーズ(Amazon FC Ambassadors)」で、自分たちがどれだけ仕事を気に入っているかを勤務時間中にツイートできるようにした。だが、そうした活動は裏目に出て、アンバサダーのパロディアカウントがツイッター上に多数発生する事態となった。アマゾンはすぐに活動を縮小し、アカウントの多くが停止もしくは閉鎖された、とアリク・トーラーは語る。トーラーは、調査報道サイトのべリングキャット(Bellingcat)でトレーニングおよび調査の責任者を務める人物である。
ところが今年の3月29日になって、アンバサダーの新たなアカウントが次々に出現した。少なくとも、表面上はそのように見えた。だが調べてみると、イヤリングの歪みやぼやけた背景など、ディープフェイクで作成された顔であることを示す特徴が一部のプロフィール写真に見られるという指摘が数多く上がってきた。そこから混乱が広がっていった。
「一連の新たなディープフェイク・アカウントは、労働組合に反対するソーシャルメディア活動としてアマゾンが仕掛けたものではないか」という噂がすぐに広がったが、アマゾンは後に、ニュ …