mRNAワクチンの効果は実世界でも90%、CDC追跡調査
米国疾病予防管理センター(CDC)による「実世界」での追跡調査で、mRNAワクチンを2回接種した場合、新型コロナウイルスの感染リスクを90%抑えられることがわかった。しかし、米国では英国型変異株が台頭してきており、雲行きは怪しい。 by Charlotte Jee2021.03.31
米国の6つの州の3950人を対象とした「現実世界」での調査によると、ファイザー/バイオンテック(BioNTech)製ワクチン、あるいはモデルナ(Moderna)製のワクチンを2回接種すると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染のリスクを90%抑制できることがわかった。この結果は、ファイザー製ワクチンが95%、モデルナ製ワクチンが94%という、各社の治験で示された有効性とほぼ一致している。
今回の米国疾病予防管理センター(CDC)の研究では、医療従事者を含むエッセンシャルワーカー(必須労働者)を対象として、2020年12月から2021年3月までの13週間にわたって毎週検査をする追跡調査を実施した。対象者のほぼ75%がmRNAワクチンの1つを少なくとも1回接種し、2回接種したグループではワクチンの効果は90%を示した。1回だけ接種したグループでは、2週間後の効果は80%であった。ワクチンを接種しなかったグループでは新型コロナウイルスの感染が161件発生したのに対し、1回接種したグループでは16件、2回接種したグループではわずか3件であった。この研究では、新型コロナウイルスによる死亡例はなかった。
この新たな研究は、ワクチンがパンデミックに対して有効性を発揮し始めていることを示すさらに有望なデータを提供している。英イングランドの保健当局は2月に、オックスフォード/アストラゼネカ(AstraZeneca)製またはファイザー/バイオンテック製のワクチンを1回接種すると、病院での治療が必要になる確率が80%以上減少したと報告した。すでに人口の半数以上へのワクチン接種を実施したイスラエルでは最近、ファイザー/バイオンテック製ワクチンが感染を予防する効果は94%、重症化を防ぐ効果は92%であることが報告されている。
ワクチン接種が急速に進んでいる(65歳以上のアメリカ人の72%がワクチンを接種済み)にもかかわらず、米国の複数の州で感染者数が再び増加している。CDCのロシェル・ワレンスキー所長は先日の発表で、「差し迫った危機」を「繰り返し感じる」と述べ、米国民に公衆衛生対策を継続するよう訴えた。ワレンスキー所長は、「楽しみにしていることが多くあり、現在の状況には期待できる兆候と改善の可能性が大いにあります。希望が持てる理由はたくさんあるのです。しかし、今は私は恐れています」と述べた。米国での感染者数の増加は、感染力の強い英国型変異株の影響である可能性が高い。変異株の感染拡大により、米国だけでなく世界中の国で、一人でも多くの人がワクチンを接種することがより一層の急務となっている。ワクチン接種は、多くの国でまだ開始されていない。新型コロナウイルスの拡散を許せば許すほど、既存のワクチンが効かない変異株が出現する可能性が高くなるのだ。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。