米国航空宇宙局(NASA)は3月7日に、ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)がまたしてもセーフモードに入ったと報告した。「搭載されているソフトウェアのエラーによるものです」とNASAは説明している。ハッブルの科学システムは完全に無事ではあるものの、地上スタッフが問題を修正するまでは、科学的な運用はできない。NASAは具体的な異常や、その原因、解決策についての詳細を公表していない。
この事態は、おそれるに値しないものだろう。ハッブル宇宙望遠鏡のような宇宙船は、不測の事態が生じるとセーフモードに突入するものなのだ。セーフモードに突入すると、望遠鏡は目標の方向を向いてデータを収集するのをやめて、太陽光パネルを用いた充電に集中する。こうすることで、トラブルシューティングをよりシンプルかつシームレスに進められるのだ(様々な部品に影響を与えるようなソフトウェアの問題が起こっている場合は、特にこの方法が役に立つ)。ハッブルは、最近では2018年にセーフモードに入った。このときは、軌道上で姿勢を制御するために使われているジャイロスコープのうち2つに問題が発生していたが、ハッブルは問題を残すことなく、3週間以内に復帰を果たした。今回の問題も、修正可能なものであるはずだ。
しかし、3月7日の発表は、ハッブル宇宙望遠鏡の老朽化を改めて認識させるものであった。約30年という人々の予想を上回る長期間にわたって任に当たってきたハッブルは、晩年を迎えたといえる。この望遠鏡には、あとどれだけの時間が残されているのだろうか。そして、残された時間が尽きたとき、ハッブルはどうなるのだろうか。
老化しつつあるハッブル宇宙望遠鏡のハードウェアは、スペースシャトルの宇宙飛行士たちが2009年にメンテナンスしたのを最後に、直接的なメンテナンスはされていない。2009年の時点では、技術者たちは、おそらくハードウェアは2016年ごろまで持つだろうと予測していた。「様々な点で刷新された数年間の飛行の後、技術者たちは機器の耐久性と信頼性を再評価して、全てを先延ばしにし始めたのです」と、トム・ブラウン博士は語る。ブラウン博士はボルティモアにある宇宙望遠鏡科学研 …