KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
いまだ休校続く米国の学校、
なぜ再開が難しいのか?
Nathan Howard/Getty Images
生物工学/医療 無料会員限定
Why reopening US schools is so complicated

いまだ休校続く米国の学校、
なぜ再開が難しいのか?

2020年3月以降、ほとんどの学校が閉鎖された米国では依然として、学校を全面再開する見通しが立たずにいる。国が示す指針には限界があるうえ、学校を早急に再開することのリスクをどう判断するか、意見が割れている。 by Mia Sato2021.03.10

全米の学校が、再開するかどうか、再開するのならいかにして感染リスクを減らすか、という難しい問題に取り組んでいる。ファイザーが必死になって新型コロナウイルス(SARS CoV-2)のワクチンを製造している主たる現場からさほど離れていないミシガン州カラマズーでは、学校年度の終盤はバーチャル授業に専念する計画である。マスク着用義務のないアイオワ州では、今や子どもたちは対面授業にフルタイムで戻ることができるようになった。一方、シリコンバレーの境界にあるカリフォルニア州サンマテオ郡の学区では、明確な決定事項はなく、低所得層と富裕層の保護者たちが何をすべきかを巡って衝突している。

困難な道のりが続いている。2020年3月以降、ほとんどの学校が閉鎖された。学区は、新型コロナウイルスの挙動についての新たな科学的知見や、新たな政策的勧告、そして家族、子ども、教師や職員のそれぞれ異なる需要に対し、調整を幾度となく求められた。

現在、バイデン大統領が自身の就任後最初の100日以内に大部分の学校を再開させるという公約を推進させている。だが、議論は相変わらず複雑な様相を呈しており、社会全体を再開することに伴う困難さの数々を垣間見せている。

「指針」の限界

全米の学校が、パンデミックの中での運営方法に関して米国疾病予防管理センター(CDC)の指針に注目してきた。最新の勧告でCDCが言っていることは、我々が1年中聞かされ続けてきたことばかりだ。曰く、校舎内の人は全員マスクを着用する、少なくとも約2メートルの距離を保つ、頻繁に手洗いをする、といった具合だ。しかし学校側は、たとえガイドラインが書面では比較的わかりやすく見えたとしても、実践するには難しい場合が多く、全く不可能な場合さえあるということに気づいている。

「公衆衛生緩和政策の間には、頭で考えたり文書化したりする段階と、その後、実行に移そうとする段階では違いがあるのです」とワシントンDCの疫学者テレーザ・チャップル医師は語る。「障壁が発生しています」。

チャップル医師は、ジョージア州の小学校を観察した米国疾病予防管理センター(CDC)による最近の研究を指摘する。CDCの研究者らは、対面授業のたった24日後に、学校に起因する可能性のある9件の新型コロナウイルスのクラスター感染を確認した。全体で、約45人の生徒や教師が検査で陽性を示した。

なぜそのようなことが起こったのだろうか。教室の内部配置や教室自体のサイズのため、距離を開けることが物理的に不可能だった。そのため生徒たちは1メートルに満たないほどしか離れておらず、プラスチックの壁で仕切られていただけだった。生徒や教師はほぼ全員マスクを着用していたが、生徒たちは教室で昼食を食べねばならなかった。

研究者らは次の点も指摘している。「教師が生徒に近づいて活動する小グループでの授業セッションの間に」教師や生徒たちが互いに感染させ合った可能性がある。

米国疾病予防管理センター(CDC)が最良とする実践方法に従うことは、そもそも困難である場合がある。しかし、それがあくまでもガイドラインに過ぎないという事実もまた問題を複雑にしている。州やその他の行政組織が作っているルールは、CDCの言っていることと矛盾することが多い。2月15日以降、アイオワ州の学校は完全な対面授業のオプションを用意するよう求められているが、学校職員の中には距離を開けることは不可能だと言う人もいる。なぜなら、アイオワ州にはもはやマスク着用義務がなく、生徒たちは学校内でマスクを着用する必要がないからだ。

各行政組織はそれぞれ異なる政 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る