KADOKAWA Technology Review
×
【1/31東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
スターシップが3度目の正直、高高度飛行後に垂直着陸に成功
SpaceX
Starship has finally stuck the landing

スターシップが3度目の正直、高高度飛行後に垂直着陸に成功

スペースXは宇宙船「スターチップ」の飛行試験で、10キロメートルの高度を飛行後に、垂直着陸させることに成功した(ただし、着陸後、機体は爆発)。同社は、スターシップを年内に宇宙に飛ばすという目標に確実に近づいている。 by Neel V. Patel2021.03.05

スペースX(SpaceX)の宇宙船「スターシップ(Starship)」が3月3日、高高度飛行に成功した。スペースXはこれで、同船の高高度飛行を3回連続で成功させたことになる。しかも、最初の2回のミッションと異なり、宇宙船は今回、着陸にも成功した。しかし、着陸した後、宇宙船は前2回と同じように爆発した。

米国中部標準時の3月3日午後5時14分頃、テキサス州ボカチカにあるスペースXの試験施設から10機目のスターシップ試作機(SN10)が打ち上げられ、約10キロメートルの空中飛行を経て、地球に向け無事に降下していった。

その約10分後、宇宙船は爆発した。原因はメタンガス漏れだと思われる。それでも、ミッションの本来の目的は達成された。

スターシップが高高度飛行後に安全に着陸したのは、今回が初めてである。「SN8」は12月9日に飛行し、12.5キロメートルの高度を飛行した後、速度を落としきれずに地上へ激突し、爆発して大破した。2月2日に高度10キロメートルで飛行した「SN9」も、着陸を試みた際にSN8とほぼ同じ運命を辿った。どちらのミッションも、3基のエンジンのうち2基のみを使って着陸しようとした。それに対し、SN10はエンジン3基をすべて使い、最終的に少し横に傾きはしたものの、垂直着陸を成功させた。

スペースXが開発しているスターシップは、地球周回軌道を越えて、月や火星へいずれ宇宙飛行士を運ぶことを目指している。高さ50メートル、燃料充填時の重量は1270トン以上になり、100トン以上の貨物や乗客を深宇宙へ運べるとされている。最終的には、現在開発中の「スーパー・ヘビー(Super Heavy)」ロケットの上に乗り、2段目のブースターの役割も果たすことになる。スーパー・ヘビーもスターシップも、メタンを燃料とするスペースX製「ラプター(Raptor)」エンジンを使用することになっている。

今後の予定については、はっきりとは分かっていない。スペースXは今回、スターシップが高高度を飛行し、安全に着陸できることを証明した。「SN11」も同様の飛行をするかもしれないし、他のテストをするかもしれない。それでも、スペースXは、今年中にスターシップを宇宙に飛ばすという目標に確実に近づいている。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は以前、2026年、あるいは2024年までにも火星に人を送りこみたいと表明している。

人気の記事ランキング
  1. How a top Chinese AI model overcame US sanctions 米制裁で磨かれた中国AI「DeepSeek-R1」、逆説の革新
  2. OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
  3. 10 Breakthrough Technologies 2025 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版
ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る