米国航空宇宙局(NASA)の職員には、探査車を火星に着陸させるのがどういうものかを表現する言い方がある。「恐怖の7分間」だ。宇宙船が火星の大気に突入し、無事に地表に着陸しようとする際には、問題が発生する要因が無数に存在する。火星と地球の間の通信には11分のタイムラグが発生するため、このドラマはいっそう緊張の多いものになる。火星探査車「パーサビアランス(Perseverance)」が2月18日に火星の地表に降下していく時、宇宙管制センターは事が終わるまで、その成否が分からないのだ(日本版注:この記事はパーサビアランスが火に着陸に成功する直前に公開された)。
「この事業には保証が全くありません」。「火星パーサビアランス」ミッションの副プロジェクトマネージャーであるジェニファー・トロスパーは2月16日に記者に語った。「でも、最高の気分です」。トロスパーは、神経をすり減らす経験のベテランだ。パーサビアランスの前の世代にあたる「キュリオシティ(Curiosity)」「スピリット(Spirit)」「オポチュニティ(Opportunity)」でも、神経をすり減らす経験をしてきた。
着陸が成功すれば、パーサビアランスは「ジェゼロ(Jezero)クレーター」を探査することになる。ジェゼロクレーターは火星の湖底の跡であり、古代生命の化石があるかもしれない。しかし、まずは着陸を成功させなければならない。
着陸
恐怖の7分間は、専門用語では「突入(entry)、降下(descent)、及び着陸(landing)」で「EDL」と呼ばれる。まず、宇宙船が火星の上層大気に時速約2万キロで突入し、急速な温度上昇に直面する。パーサビアランスは、高温ガスと熱風を監視する28個の一連のセンサーを備えており、遮熱材と耐熱シェルで保護されている。このときの温度は、最高で1300°Cという過酷な水準に達する。
EDLに入って約4分後には、約11キロ上空を時速約1500キロで急速に地上に向かい、21メートルのパラシュートを展開する。宇宙船は間もなくして遮熱材を取り外し、遮熱材の下に装備されているたくさんのレーダー計測器やカメラを使って宇宙船を安全な場所に着陸させる。その際には、「地形相対航法(Terrain-Relative Navigation)」と呼ばれるソフトウェアによって、カメラが撮影した画像を処理して宇宙船に搭載された地形地図と比較し、現在地と向かうべき安全な場所の候補を割り出す。
EDLに入って6分後、探査車は上空約2キロで外側のシェルとパラシュートから切り離され、直接地上に向かう。このとき、探査車の上部に取り付けられている着陸船下降段は、推進システムを使用して、落下予定地点の10メートルから100メートルの範囲内に安全な場所を見つけて時速約2.7キロにまで減速する。次に、着陸船下降段に取り付けられたナイロン製コードで、探査車を上空20メートルから地上に下ろす。探査車が地上に触れると、コードは切断され、着陸船下降段は飛び去って距離が離れた安全な場所に墜落する。これをもって、パーサビアランスの新たな拠点への到着が完了する。
科学
スピリットとオポチュニ …