政府はあてにならない 米大寒波でネットで「互助」の動き
テキサスを襲った記録的な寒波の中で起きたネット上の「相互扶助」の動きは、パンデミックの時代らしい出来事だ。ただし、こうした活動に頼るのは本来あるべき姿ではない。 by Tanya Basu2021.03.07
バレンタインデーの日、テキサス州は1899年以来となる極渦(北極圏と南極圏の上空に発生する巨大な低気圧性の渦)に突入した。氷点下の気温が広範囲にわたる停電を引き起こし、高温多湿な気候に適した家は風や冷気には無力だった。水道管は破裂し、天井は崩落した。水や食料、衣類が配給され、町には長蛇の列ができた。テキサス州ではこれまでに数百人もの人々が家を失い、少なくとも30人が亡くなった。
政府の対応は遅く、不十分だった。連邦政府が介入して被災地に発電機や水、毛布を送るのに4日かかった。地元自治体は道路の再開と水道の復旧の調整をつけるのに苦労していた。
だが、嵐の襲撃から数時間以内に、パンデミックの時代らしい出来事が起きた。市民らが、政府がやり残した空白部分に足を踏み入れたのだ。近隣の住民を助けようにも、パンデミックと凍結した道路のせいで1軒ずつ訪問するのは難しい。そこで、市民らはシンプルで共有可能なグーグル・ドキュメントを作成し、インスタグラムとツイッターでそれをすぐに拡散した。被災したコミュニティの住人たちが、行政機関を頼らずに被災情報へすぐにアクセスできるようにしたのだ。個人間送金アプリのベンモ(Venmo)、モバイル決済・送金アプリのキャッシュ・アップ(Cash App)、クラウド・ファンディングのプラットフォームのゴーファンドミー(GoFundMe)などを使えば、必要としている人々へお金を直接送ることもできる。
相互扶助(Mutual aid)は、新しい発想ではない。疎外されたコミュニティの中では、長く当たり前だった考え方だ。だが、パンデミックの危機の1年間で、危機に陥ったときに真っ先に頼れるのはインターネットであることが広く理解され、市民らはすぐに行動するように鍛えられたのだ。
ヒューストンを拠点とする24歳の学生、メリッサ・マルチネスは72時間もの間、電気やインターネットが使えない状 …
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