1月28日、インド南部の都市ハイデラバードのある病院の医師が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの初回接種の日時が記されたSMSを受け取った。医師は2020年4月から、新型コロナ患者を担当する病棟で多くの人々が息を引きとる現場を目にしながら、奮闘してきた。ワクチンは、彼が待ち望んでいた唯一の光だったのだ。
しかし、医師はSMSを読んでも、それほど嬉しくなかった。というのも、宛先が自分宛ではなかったのだ。他人の名前が記された当選くじを受け取ったような気持ちだった。
その医師(病院がメディア取材を許可しないため匿名希望)は「困惑しました」と述べる。心配になって、自分が本当にワクチン接種に呼ばれたかどうかの確信が持てないまま、自身の勤める病院へ急いだ。結局、ソフトウェアの不具合であることが判明し、彼は呼ばれていないことが分かった。
これまで、世界で2番目に多い新型コロナ感染者が発生しているインドでは、アジア有数の野心的なワクチン接種計画を開始している。目標は、8月までに3億人の接種である。これを実現するため、現在インド政府は「コ・ウィン(Co-WIN)」と呼ばれるワクチン管理システムを使用している。今のところ、3000万人の医療従事者や現場労働者に接種することを目指している。
これらの労働者は、緊急使用が承認された2種類のワクチンのうちのいずれかを接種することになる。ひとつはインドで「コビシールド(Covishield)」と呼ばれ、セラム・インスティテュート・オブ・インディア(Serum Institute of India)によって製造されるアストラゼネカ/オックスフォード大学(AstraZeneca-Oxford)開発のワクチン。もうひとつはバーラト・バイオテック(BharatBiotech)が開発した国産ワクチン「コバクシン(Covaxin)」だ。
コ・ウィンはワクチン接種計画を支える、いわば屋台骨である。登録情報の処理、接種スケジュールの作成、テキストメッセージを介した接種者への通知、適切なワクチン接種施設への案内、そして2回接種を完了した人に対する証明書の発行などを管理する。コ・ウィンの利用は医療従事者から開始しているが、今後は一般国民にも利用される予定だ。アプリを通じて、利用者自らが登録する必要がある。
一方で、さまざまな原因に端を発した複数の技術的障害のために、インドで予防接種を受けている人の数は、すでに予定よりも大幅に少なくなっている。いくつかの州では目標を達成できず、接種計画全体にも遅れが出てきた。
こうした不具合により、ワクチン投与を担う医療従事者らは、より簡素にワクチン配布を管理する方法への転換を迫られている。例えばデリーにある全インド医科大学(All India Institute of Medical Sciences:AIIMS)では、ソフトウェアの不具合が原因で医師らがワクチン接種に関するメッセージを確認できなかった。ここで病院が取った方策は「まずは列に並べ」というものだった。医師らにワクチン接種施設を訪れることを許可し、そこで自分の名前が登録されており、ワクチンが使用可能であれば接種してよしとしたのだ。
最初期にワクチンを接種したAIIMSのランディープ・グレリア所長は、「どうすればより効率的にワクチン接種計画を …