2月9日、アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「ホープ(Hope)」は火星の周回軌道に到達した(以下の記事はホープが火星軌道に到達したことをUAEが発表する前に公開された)。
火星に打ち上げられた探査機のうち、実際に到達するのは半数以下だ。米国航空宇宙局(NASA)の探査車「キュリオシティ(Curiosity)」をはじめとする有名なミッションには失敗がつきものだ。例えば欧州宇宙機関(ESA)の着陸探査機「スキャパレリ(Schiaparelli)」は、2016年の着陸時、火星の地表に激突した。
2月9日にホープを火星の軌道に投入するUAEの初の試みは、苦しい戦いになるかもしれない。しかし、この火星ミッションが成功すれば、UAEはソ連、NASA、ESA、インドに続き、世界で5番目に火星に到達することになる。
「我々のチームは火星の周回軌道への到達に向けて、最大限の準備をしました」と、UAE宇宙庁のサラ・アル・アミリ長官は語る。
すべてがうまくいけば、その後はかなり刺激的な科学が待ち受けている。しかし、UAEとそのパートナーにとって、今回の「エミレーツ・マーズ・ミッション(Emirates Mars Mission)」は2020年夏に始まった旅を完了させれば終わりというわけではない。同ミッションは、今後さらに野心的なプロジェクトを進めようとする始まったばかりの宇宙計画であり、アジアの新たな科学技術のイノベーション・ハブを目指す国の未来である。ホープのミッションが成功するかどうかに関係なく、その影響はすでに感じられる。
科学
エミレーツ・マーズ・ミッションは、火星が温暖湿潤で生命が生存可能な環境から、乾燥した冷たい惑星に変貌した原因を解明しようと、長年にわたって惑星科学者が実施している大規模な調査の一部だ。その謎の究明には、火星がどのように大気を喪失し、時間の経過とともに湖や川の水が蒸発したかを解明することが大きな鍵となる。
このミッションでは、探査機ホープと3つの主要な観測機器を使って大気を調査する計画になっている。さまざまな波長を制限するフィルターを多数使用し、火星の写真を撮影することで、科学者はこれまでより地表に …