ケンタウルス座アルファ星のハビタブルゾーンに惑星が存在か
太陽系から最も近い恒星系であるケンタウルス座アルファ星のハビタブルゾーンに、惑星が存在する可能性があることが、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「NEAR」プロジェクトでの観測から示された。 by Neel V. Patel2021.02.17
天文学者の国際チームが、4.37光年離れた連星系であるケンタウルス座アルファ星に、生命が存在可能な惑星が潜んでいる可能性を見い出した。これまでに見つかった生命が存在可能な惑星の候補のうち、最も太陽系に近い惑星である可能性があるが、もし生命が存在するとしても、恐らく地球とはかなり異なっているだろう。
ケンタウルス座アルファ星は、太陽系から最も近い恒星系であり、3つの異なる恒星から成る。ケンタウルス座アルファ星AとBは、太陽系から約4.37光年離れた場所で互いに連星を形成する太陽に似た恒星である。そして、太陽系のより近くにあり(4.24光年)、他の2つの恒星との重力的なつながりがはるかに弱い赤色矮星であるプロキシマ・ケンタウリが存在する。
プロキシマ・ケンタウリの周りには2つの惑星が公転している。その1つ(プロキシマb)はハビタブルゾーン(生命居住可能領域。恒星の周りの惑星系のうち表面に液体の水が存在しうる領域)に位置する地球と似たサイズの太陽系外惑星だと考えられている。だが、プロキシマbは潮汐固定され、強い恒星風にさらされていると考えられているため、生命が存在可能である可能性は低い。
ケンタウルス座アルファ星の恒星系が、生命が存在する世界を持つ可能性は、絶えず科学者の関心を引き付けてきたが、これまで、太陽系外惑星の存在は確認されていなかった。その理由の一つは、ケンタウルス座アルファ星が太陽系から極めて近いため、非常に明るく、天文学者がその領域にある惑星に焦点を絞ることがほとんどできないことにある。
だが、天文学者の国際チームは、「ネイチャーコミュニケーションズ(Nature Communications)」に2月10日に掲載された論文で、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)を用いた観測で、ケンタウルス座アルファ星Aのハビタブルゾーンから明るいサーマルイメージングの信号を検出したことを発表した。
この熱信号は、ESOと「ブレイクスルー・ウォッチ(Breakthrough Watch)」が支援する300万ドル規模のプロジェクトである「NEAR(Near Earths in the Alpha Center Region、ケンタウルス座アルファ星領域にある地球に近い天体)」を通じて発見された。ブレイクスルー・ウォッチは、イスラエルとロシアの国籍を持つ億万長者であるユーリ・ミルナーが支援する、ケンタウルス座アルファ星系や、太陽から20光年以内の他の恒星系の周りにある地球サイズの岩石惑星を探すイニシアチブだ。
NEARにより、星の光を遮断することで、恒星からの光を反射する惑星が発する熱信号を探せるようにするサーマル・クロノグラフをはじめとする、超大型望遠鏡のアップグレードが実施された。天文学者チームは、超大型望遠鏡の100時間分のデータを分析し、ケンタウルス座アルファ星の周辺に熱信号を検出した。
ここで問題になっている惑星はまだ名前も付けられておらず、存在も確認されていない。今回新たに検出された熱信号は、この惑星が海王星の大きさに近いことを示唆している。つまり、この惑星は地球に似た世界ではなく、温暖なガスに包まれた地球より5~7倍大きい惑星であるということだ。もしそこに生命が存在するならば、それは恐らく雲の中を漂う微生物だろう。また、検出された熱信号が、熱い宇宙塵、背後にあるより遠くの天体、周辺の光子など、他のさまざまな原因によって引き起こされた可能性も十分にある。
惑星の存在を確認するのは、それほど難しくはないはずだ。再びその天体を観測し、新たな位置が軌道と一致していることを確認できればいい。どのようなものであれ、追跡調査がいつ実施されるのかは、まだ明らかではない。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。