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「文句言っても仕方ない」市民らがワクチン情報サイト立ち上げ
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People are fed up with broken vaccine appointment tools — so they're building their own

「文句言っても仕方ない」市民らがワクチン情報サイト立ち上げ

ワクチン接種が始まった米国では今、一見すると簡単そうな問題に答えようというボランティアの取り組みが増えている。接種予約やワクチンの有無など、公的な情報が行き渡っていないのだ。自ら問題を解決しなければならないと考えた市民たちは今、独自のWebサイトやスプレッドシートを立ち上げている。 by Tanya Basu2021.02.16

全米では、今シーズン一番の話題のチケット、つまり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種の予約獲得をめぐって、大騒ぎになっている。予約方法として推奨されているのは、地元の病院のWebサイトを閲覧するか、ホットラインに電話するというものだ。だが、その結果イライラさせられることも多い。つながらないホットラインに何時間も電話をかけ続けたり、チケット販売サイトのイベントブライト(Eventbrite)といったプラットフォームで予約できるかどうかを探し回ったり、やけになってパッチ(Patch)やネクストドア(Nextdoor)といった地元のニュースサイトに、どうしたらワクチン接種の予約ができるのかと投稿したりしている。

言い方を変えれば、この国のワクチン接種は混乱しているということだ。絶望的な気持ちになった人たちが、今では自身の手で問題を解決しなければならない、と考えるようになった。

キャリー・クレイバーの場合を取り上げてみよう。父親がテキサス州の規則に則ってワクチン接種の資格を得た後、クレイバーは何時間もかけて父親のためにワクチン接種予約を取ろうとした。父親はテキサス州の公式サイトに掲載されている地元の薬局を何軒か回ったが、どの薬局にもワクチンは残っていなかった。何軒かの薬局からは、「後でもう一度来てください」と言われた。

「『おざなりな対応』だと思ったんです」とクレイバーは言う。「父にとって難題だとも思いました。父はとても健康で、同じ接種対象のグループでは若い方ですが、もっと年配の人やワクチン探しに奔走できない人はどうするのだろう、と思いました」。

そのまさに同じ日の1月2日、クレイバーは午後3時から夜の11時半までかかって、州全体でワクチン接種が可能と思われる場所をリストアップしたサイト「新型コロナウイルス感染症ワクチンTX(Covid19 Vaccine TX)」を作り上げた。デジタル製品のデザイナーであるクレイバーは、この種のサイトが、読みやすく、直感的に操作でき、そして迅速に更新する必要があることを知っていた。サイトは基本的に、ユーザーが接種の場所に関する情報をアップロードするものだ。書き込むのは、その日そこにワクチンはあったのか、そこは予約を受けつけていたのか、順番待ちの名簿はあったのか、という3つの質問に答える。

クレイバーはこのプロジェクトを、クラウドベースのスプレッドシート・サービスであるエアテーブル(Airtable)にアップロードし、レディット(Reddit)にリンクを投稿してから寝た。翌朝7時に目を覚ますと、1つの書き込みがあった。「少なくとも、誰かは気にかけてくれている」と考えたことをクレイバーは覚えている。その後、その日いっぱいを費やして、州内の約1400カ所の情報を手作業で入力した。「それ以来もう、ノンストップです」とクレイバーは言う。毎週、本業以外の約40時間を費やしてサイトの維持に努めている。開設以来、サイトの総訪問者数は5万人に達した。

クレイバーのサイトは、ワクチン接種の予約を取るために作られた数多くのソリューションの1つに過ぎない。米国の公共システムがうまく機能していないから、その欠陥を補うために、人々がボランティアで対処している取り組みの1つなのだ。

もうひとつの例が、カリフォルニア州の地図を掲載しているサイトの「ワクチン接種CA(Vaccinate CA)」だ。ユーザーが自分のいる場所をクリックするとポップアップ・ウインドウが表示され、資格要件、ワクチンの有無、予約用の連絡先などの最新情報が提供されている。ツェール・エグナーは、このプロジェクトを主宰する1人だ。「正確には、これはクラウド・ソーシングではありません」とエグナーは言う。「一般の人々に、サイトに掲載されている情報が古くなっている場合はお知らせくださいとお願いはしています。でも、ワクチン接種の場 …

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