新型コロナワクチン、南アフリカ型変異株では予防効果低下
ノババックス(Novavax)とジョンソン・エンド・ジョンソンがそれぞれ開発中の新型コロナワクチンについて、南アフリカ型変異株への有効性が低下することが分かった。 by Charlotte Jee2021.02.04
1月29日に発表された新型コロナウイルスワクチンの2つの新しい臨床試験結果は、南アフリカの変異株に対してワクチンの効果が低いことを示している。ノババックス(Novavax)とジョンソン・エンド・ジョンソンは、ワクチンは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に効果的だが、南アフリカの「B.1.351」と呼ばれる変異株に対しては、その効果が低下することが最終段階の治験で示されたと発表した。
ノババックスのワクチンは、新型コロナウイルス全体で89%の有効性を示しており、英国型の変異株「B.1.1.7」に対する有効性は86%だった。一方、参加者のほとんどが南アフリカ型に感染していた南アフリカでの臨床試験では、ワクチンの有効性は50%にとどまった(ほとんどのインフルエンザ・ワクチンの有効性に近い)。英国はノババックスのワクチンを6000万回分購入しており、英国内で製造する予定だ。ノババックスは米国のバイオ企業で、米国のワクチン開発計画「ワープ・スピード作戦(Operation Warp Speed)」の一環として米政府から16億ドルの資金援助を受けている。
一方、ジョンソン・エンド・ジョンソンは1月29日、同社が開発した1回接種型のワクチンは、新型コロナウイルス感染症に対する全体的な予防効果は66%だったが、南アフリカ型に対しては57%に低下したと発表した。臨床試験は、危険な南アフリカ型変異株が急速に拡大していた9月から12月までの期間に、数千人の南アフリカ人の参加者によって実施された。このワクチンは、1回の接種で済み、昨年12月に米政府の認可を受けたモデルナ(Moderna)とファイザーが開発した超低温での保存が必要なmRNAワクチンよりもはるかに容易に保管できるため、広く期待されていた。
南アフリカ型変異株への有効性が低いと判明した新型コロナウイルス・ワクチンのメーカーは、ノババックスとジョンソン・エンド・ジョンソンだけではない。モデルナとファイザーは最近、それぞれ南アフリカ型への効果が低いことを報告した。だが、ワクチン・メーカーは変異しているウイルスに対抗するように改良したワクチンを迅速に製造できると自信を持っている。米国では1月28日、サウスカロライナ州で2人が南アフリカ型変異株に感染したと報告されている。米国で南アフリカ型の感染が確認されたのは、これが初めてだ。2人の間に接触はなく、米国の一部のコミュニティにB.1.351がすでに広まっている可能性を示唆している。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。