ドナルド・トランプの国境壁は経済的に意味がないばかりか、環境にとっても災いだ。
MIT Technology Reviewは、壁の建設に約400億ドルかかることはすでに記事にした。しかし建設材料は環境に大きな被害を与える可能性がある。長さ約1600km、高さ約15m、地下部約4.6m、厚さ約30cmの壁を想定すると、970万立方メートルのコンクリートと23億kgの鉄(おそらく米国産の鉄)が必要になる見通しだ。
バース大学の持続可能エネルギー環境研究所が算出した数値によれば、コンクリートを1立方メートル注ぐたびに約380kgの二酸化炭素が放出されるという。そのため壁のコンクリートは最大で370万トンのCO2を出す可能性がある(実際はこのうちの一部が時間とともにコンクリートに吸収されるが、その速度は遅い)。
その後、中に含まれるリサイクル金属の量によるが、鉄1kgあたり約1.8kgの二酸化炭素が放出される。つまり、鉄がさらに410万トンのCO2を放出することになる。
結局、壁は合計で780万トンの二酸化炭素を排出することになる。
ある状況設定によると、この排出量は、家庭から1年間に排出される二酸化炭素量の82万3654世帯分に相当する。しかも最低限の見積りだ。継続的な保守作業、交通経路の変更、その他予期しない結果によって、この数字はずっと高くなるもしれない。
さらに、壁は生態学的にも大きな脅威になる。マザーボードが指摘しているように、米国魚類野生生物局の2016年のレポートによると、壁の建設によって「111の絶滅危惧種、108種の渡り鳥、4つの野生生物保護区と魚のふ化場、そして数知れない保護湿地」に悪影響が及ぶ可能性があるという。
壁が環境によい影響を与える可能性(トランプ大統領には受け入れがたいだろうが)もある。ブルームバーグによれば、壁建設費をまかなう一案として取りざたされているメキシコからの輸入に課税した場合、メキシコ産原油に20%の輸入税がかかり、米国のガソリン価格は約3.8リットルあたり30セント上昇する見込みだ。ガソリン価格が上がるとアメリカ人は車の運転を減らすので、理論的には壁によって運輸部門の二酸化炭素排出量が減ることになる。
しかし、損害の大きさを考えれば、壁の建設は間違いなく無駄だろう。ニューオーリンズ芸術協会のブライアン・リー・ジュニア空間・都市計画室長は、サイエンティフィック・アメリカン誌の記事でこの状況をほぼ総括している。「長大な壁に費やされるエネルギーは、多くの点でばかげており無益です。建設に費やすエネルギーもそのひとつです。(中略)しかし社会的な観点からみたエネルギーもまた無益です」
(関連記事: Scientific American, Bloomberg, Motherboard, “トランプ候補を完全論破 適当なコスト計算をするな,” “セメントには二酸化炭素吸収効果があった”)