バイデン大統領は執務初日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する7項目のプランを発表し、同感染症と戦うには「戦時のような努力」が必要だと語った。大統領は科学に従って行動すると誓い、政権の対応において透明性と説明責任に中心的価値を置くことを約束した。これらのプランは、大統領の意図を列挙した200ページの戦略文書から抜粋したもので、一部は大統領令によってすでに実行に移され始めている。毎日数千人の米国人が新型コロナ感染症で亡くなっており、死者数はあと数週間で50万人に達すると想定されている。したがって、対応をいくら急いでも、急ぎ過ぎということはない。
プランの内容
- 全国的なマスク着用の義務化。市長や知事と連携し、地域の命令を策定する。家の外で人が周囲にいる場合にマスクを着けるよう全米国民に求める。
- 全米国民への無料検査の提供。ドライブスルー方式の検査場の数を2倍にし、家庭での検査や簡易検査に投資する。また、検査キットを製造し、配布するパンデミック検査委員会(Pandemic Testing Board)を設立する一方で、米国公衆衛生部隊(US Public Health Jobs Corps)を創設して、少なくとも10万人の米国人に接触追跡やその他の公衆衛生の仕事を担わせる。
- 個人保護具(PPE)につきまとう問題の解決。国防生産法を最大限活用して増産をはかり、将来的に他国に依存せずにPPEを生産できるようにする。
- 社会的距離に関する明確かつ証拠に基づいた公衆衛生指針の提示。リスクやウイルスの広がりに応じた学校の閉鎖や自宅待機命令、飲食店の制限といった対応の調整について、疾病予防管理センター(CDC)が地域共同体に明確な指針を出すようにする。州と地方の政府や学校、小さな企業がそうした指針に従えるよう、緊急資金を提供する。
- 全米国民が治療と無料のワクチン接種を受けられるような計画の策定。ワクチンの製造・配布に250億ドルを投じる。ワクチン開発に政治を持ち込まないようにし、ワクチンの価格つり上げのような事態が起こった際に対応する。
- 高齢者や高リスクの米国民の保護。新型コロナウイルス感染症人種・民族格差特別委員会(COVID-19 Racial and Ethnic Disparities Taskforce)を立ち上げ、勧告や監視体勢を提供する。全国パンデミックダッシュボード(Nationwide Pandemic Dashboard)を作成し、居住地のリアルタイムの感染状況を市民に知らせる。
- 将来のパンデミックを抑制するための米国の防御態勢の拡充。世界の健康安全保障および生物兵器防衛に関するホワイトハウス国家安全保障理事会(White House National Security Council Directorate for Global Health Security and Biodefense)を復活させ、世界保健機関(WHO)に再加盟する。また「プレディクト(PREDICT)」という病原体追跡プログラムを再度立ち上げ、CDCの「病気の探偵」の数を増やす。
バイデン大統領は1月20日に10の大統領令に署名し、すでに一部を実行に移している。大統領令には、公共交通機関に乗る際の新たなマスク着用義務や、パンデミック検査委員会(Pandemic Testing Board)の創設、学校や企業に関する新指針の策定命令などが含まれている。だが、議会の共和党が上記の対策の資金源となる1兆9000億ドルの救済パッケージに賛成するかどうは不透明であり、新大統領の眼前には今も大きな政治的障害が横たわっている。