3Dプリントで移植可能な皮膚の生成に成功で人工器官の実現迫る
付加製造の手法により、移植可能な皮膚を生成できるようになり、6年以内に最初の身体器官が作られる可能性がある。 by Jamie Condliffe2017.01.27
3Dプリントが登場して注目を浴びていた頃の大げさな宣伝はなくなりつつある。一方で、生体組織を作り出すために3Dプリントの手法を使った研究者が、有望な成果を出した。
人体組織の一部を3Dプリントすることは目新しいアイデアではない。この手法の基本的なアイデアは、成形したい細胞を含むポリマーやジェルで三次元の組織構造を印刷し、細胞が生きた状態の生体組織になるまで成長させることだ。人体組織の3Dプリントは非常に難しくはあるが、もし達成できれば、移植患者に臓器を供給できるようになり、ドナーは不要になるだろう。
今週、マドリードのスペイン人科学者は、移植可能な人間の皮膚を印刷できる新しいハードウェアの研究を発表した。皮膚細胞を含む血漿を精密な形状物に付着させ、皮膚細胞を形状物上で繁殖させることで、真皮や表皮などの層(表皮は一番上の層)から成る皮膚のそれぞれの層を3Dプリントで作成したのだ。
研究者によると、3Dプリントで生成された皮膚層は移植に使えるほか、医薬品や化粧品等の製品開発で、人体への影響を調べる実験にも使えるという。人工皮膚の人間への移植はまだ承認されていないが、マウスでの移植では安全だとわかった。ロレアル等の企業も同様の手法で皮膚を生成しようとしている。
マウス向けには血管や人工卵巣まで生成されており、人工皮膚の作成成功は、他の素晴らしい成果に匹敵する。ただし、人間への移植に適したすべての臓器が3Dプリントで生成できているわけではない。細胞を生きた状態を保って複雑な形状物に移植するのが難しいのだ。皮膚は平らで規則正しく重なっているため印刷に適しているが、心臓を3次元的に再現するのは皮膚よりも非常に難しい。
人体器官を3Dプリントするには、正確にはあとどれだけの期間がかかるだろうか。生体印刷分野全体の状況に関するエコノミスト誌の調査によれば、より単純ないくつかの器官の生成で近頃進展があり、今後6年以内に、3Dプリントされた最初の肺や腎臓が機械で生成される可能性があるという。
(関連記事: Biofabrication, The Economist, “Microscale 3-D Printing,” “人工透析患者を3Dプリンターで救う方法,” “Artificial Organs May Finally Get a Blood Supply“)
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クレジット | Image courtesy of Charles III University of Madrid |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。