石油プラットフォームから農場まで、米国内の労働市場は従来に増してロボット労働者を歓迎している。ロボット労働者を採用する企業はコストを削減できるが、ロボットは中国製であることは、企業重視、「アメリカ・ファースト」のポピュリズムを掲げる新大統領にとって都合の悪い話だ。
ロボットには以前から自動車や消費者向け家電製品を組み立ててきた実績がある。作業内容が定型化されている工場でロボットの需要が増え続ける一方、非定型的な作業でもロボットへの需要は増している。たとえばブルームバーグの記事によれば、原油採掘場では、油井を掘り進める時に使う重いパイプの連結作業をロボットが担当するようになり、採掘現場の自動化が進んでいるという。ある石油企業によれば、これまでの油井では従業員が20人は必要だったが、もうすぐたった5人で済むかもしれないという。
一方で、賃金の上昇により、重労働を伴う作物(新鮮な果物や野菜)を育てる農家にもロボット採用の動きがある。フォーブス誌とブルームバーグの記事によれば、収穫や苗の間引き用のロボットは、初期費用が高く付くものの最低賃金を要求してこない。鉱業分野でも同様の変化があるほか、建設現場でもロボットが採用されそうだ。
こうした報道にさらされると、多くの雇用機会が危機に晒されているように感じるし、実際、昔から続いてきた役割の多くがロボットに置き換わっているのだ。しかし最近の記事で紹介したように、人間がロボットに雇用機会を根こそぎ奪われる日はもう少し先の話だろう。
こうした未来予測よりも、米国はむしろ、ロボットの故郷は実際どこなのか、を心配すべきかもしれない。ジャーナリストのファルハド・マンジューがニューヨーク・タイムズ紙で書いているように、米国の労働市場の自動化に使われる機械は中国製なのだ。米国が産業用ロボットにあまり投資しなかった時期、中国は猛烈な勢いでロボット軍団を製造したのだ。
産業用ロボットを米国内で製造する企業への投資を拡大することは、トランプ大統領の示す方針に沿うとマンジョーは論じている。だが、この政策は新政権による雇用機会創出の願望とはかみ合いにくい。むしろ、米国経済は(少なくとも部分的には)中国製ロボットを基礎として成立する事実を、トランプ大統領は受け止めるべきなのだ。ロボットの形で米国に流入する労働力を食い止めるためには、壁以上の何かが必要なのだ。
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