新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した元患者に、感染から8カ月経過した後でも強い免疫が残っていることが、新たな研究で分かった。この結果は、論文の著者が新型コロナウイルスに対する免疫はおそらく何年も持続するだろうと解釈する心強い兆候である。それと同時に、新型コロナウイルス感染症から身を守り、最終的にパンデミック(世界的流行)を鎮静化させるためにはワクチンを何度も追加接種する必要があるという心配を和らげるはずだ。
「元々、新型コロナウイルスは免疫記憶をあまり誘発しないのではないかという懸念が多くありました。しかし、免疫記憶はむしろかなり良好なようです」。カリフォルニア州にあるラホヤ免疫研究所の研究員で、この新たな論文の共著者であるシェーン・クロッティ教授は語る。
2021年1月6日にサイエンス誌で発表されたこの研究は、新型コロナウイルスに対する免疫は短期間しか持続しない可能性があり、すでに回復した数百万人の人々も再感染のリスクに晒されていることを示唆してきたこれまでの研究結果とは対照的な内容となっている。新型ではない他のコロナウイルスの感染時には、かなり急速に衰える抗体が生成されることから、新型コロナウイルスに対する免疫も短命だという厳しい見方はそれほど意外ではなかった。しかし、この新しい研究では、再感染が問題になるのは、免疫の獲得が最初の感染によるものであろうとワクチン接種によるものであろうと、免疫を獲得したごく一部の人々に限られることを示している。
実際、今回の新研究では、回復患者のうち少数の人々は長期間持続する免疫を持たないことが示されている。しかし、ワクチン接種によってより大規模な集団免疫を獲得することで、その問題は相殺されるはずだ。
この新しい論文では、新型コロナウイルス感染症から回復した男女185人の血液サンプルが調査された。185人の大半は軽症者であったが、7%は入院した人たちであった。各人は、最初の発症から6日から8か月の間に血液サンプルを1回以上提供し、血液サンプルのうち43本は最初の発症から6か月後に採取されたものだった。調査を実施したチームは、再感染を防ぐために連携して働く複数の免疫の担い手の水準を測定した。免疫の担い手とは、抗体(免疫系が破壊できるよう病原体に結合する、あるいは病原体の活動を中和する)、B細胞(抗体を作る)、T細胞(感染した細胞を死滅させる)のことである。
この研究チームは、発症から8カ月後に抗体がやや減少するものの、減少の程度は個人間で大きく異なることを発見した。しかし、T細胞の減少数はごくわずかで、B細胞の数は安定を保ち、どういうわけか増加していることもあった。これはつまり、自由に漂う抗体の数は減少するものの、抗体の産生を再開し、新型コロナウイルスへの攻撃を調整する成分は、かなり高い水準で残存しているということである。クロッティ教授は、感染後の免疫記憶につながるメカニズムと同じものが、ワクチン接種後の免疫形成の基礎となっているので、ワクチンを接種した人にも同じ傾向が当てはまるはずだと付け加えている。
また、新型ではない他のコロナウイルスに対する免疫の持続は芳しくないものの、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスの近縁種であるSARSコロナウイルスから回復した人々の体内で何が起こるかを調べる価値はある。2020年8月に発表された研究では、SARSコロナウイルスに特異的なT細胞は少なくとも17年間血液中に残る可能性があることが示されており、新型コロナウイルスに対する免疫についても、数十年持続する可能性があるという期待が高まっている。
今回の新しい研究は完璧ではない。個々の被験者から複数の血液サンプルを採取した方が良かったであろう。「免疫は人それぞれ異なり、ごく少数の免疫記憶の弱い人は、やはり再感染しやすい可能性があります」とクロッティ教授は警告する。そして、何年か経過するまで、新型コロナウイルスに対する免疫について確たる結論を出すことはできない。時期尚早である。とはいえ、この最新の研究結果は、ワクチン接種の展開が上手くいけば(大々的に接種が実施されれば)、近いうちにパンデミックを過去の出来事にすることができるかもしれないという、望ましい未来の兆しだと言える。