2020年、宇宙開発は計画どおりにはいかなかった。世界中のほぼすべての物事と同様に、宇宙での活動もパンデミックによって大打撃を受けた。MITテクノロジーレビューは2019年末、2020年に期待する7つの宇宙ミッションをリストアップした。これらミッションのうち、スペースX(SpaceX)が宇宙飛行士を宇宙に送り込んだり、中国が月の石を地球に持ち帰ったり、といくつかは見事に成功した。だが、欧州とロシアの火星探査車「ロザリンド・フランクリン(Rosalind Franklin)」の打ち上げは2022年に延期され、スペースXの宇宙船はこれまでの最高高度に上がったものの宇宙空間には達しなかった。ほかにも、2020年代の終盤に再度月に人間を送り込むことを目指す米国航空宇宙局(NASA)の新たな月探査計画の最初のミッションである「アルテミス(Artemis)1」をはじめとする多くのミッションが、残念なことに実現しなかった。
とは言うものの、2021年は宇宙にとっては、かなり刺激的な1年になりそうだ。とりわけ、人類を再び月に降り立たせることに対するNASAの野心が高まり、宇宙産業がこれまで以上に急速な成長を遂げ続けていることを受けて、さらに多くのことが待ち構えていることは間違いない。
ここでは、2021年の打ち上げや新たな節目として最も期待される11のミッションをご紹介しよう。もっとも、宇宙は予測不可能であり、これらのミッションの多くが数カ月あるいは数年単位で遅れる可能性は大いにある。
1. 3つの火星ミッション:2月
火星は、アラブ首長国連邦の「ホープ(Hope)」軌道周回船、NASAの「パーサビアランス(Perseverance )」探査車、中国の「天問1号」(軌道周回船と着陸機、探査車を搭載)という、異なる国が打ち上げて運用する3つのミッションの訪問を受けることになる。これらのミッションは、いずれも2月に火星の軌道に到達し、2月下旬には「パーサビアランス」が、4月には「天問1号」がそれぞれ火星表面に向かう予定だ。
ホープは、火星からなぜ水素と酸素が失われたのかといった火星大気に関する科学者の疑問を解明するのに役立つだろう。「天問1号」と「パーサビアランス」は、過去または現在の生命の痕跡を探し、火星の地質を調べることになっている。NASAの火星探査ミッションはおなじみになっているが、中国とアラブ首長国連邦は、今回初めて火星を間近で見ることになる。
成功する確率:90%
これら3つのミッションはすでに打ち上げに成功しているが、すべてのミッションが火星への旅を乗り切り、そのうち2つは着陸を成功させなければならない。
2. ボーイングの2回目のスターライナー試験飛行:3月29日
スペースXのカプセル型宇宙船「クルードラゴン(Crew Dragon)」は、国際宇宙ステーション(ISS)への有人ミッションを成功させたが、NASAが国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の送迎に使用したいと考えているのはクルードラゴンだけではない。ボーイングにも、2019年12月に国際宇宙ステーションへの無人ミッションに失敗した「スターライナー(Starliner)」という宇宙船がある。この宇宙船のソフトウェアはバグだらけで、中にはカプセルを完全に破壊しかねないものも含まれており、ボーイングにとっては最悪の瞬間だった。
それでも、ボーイングは、「スターライナー」のコードをくまなく調べ上げ、新しい厳格なテストを多数重ねてシステムを稼働させた後、3月にテストミッションをやり直そうとしている。すべてがうまくいけば、「スターライナー」は2021年後半には人間を国際宇宙ステーションに送り込めるかもしれない。
成功する確率:80%
これまでに起こったことを全て考慮すると、ボーイングに関して確実なことは何も言えない。
3. 商業月面物資輸送サービス(CLPS)初の月面ミッション:6月と10月
アポロ計画の後継となるNASAの「アルテミス」計画は、月と往復する短い旅行を2、3回実施するだけではない。人間を恒久的に月に滞在させることを目的としており、民間企業が関与している。NASAの商業月面物資輸送サービス(CLPS:Commercial Lunar Payload Services)は、月で何かをしたいと考えている小規模企業にとっては、新しい宇宙船で小型のペイロードを運ぶほか、月で新しい宇宙飛行技術をテストしたり、気の利いた科学実験をしたりするよい機会となるだろう。
アストロボティック・テクノロジー(Astrob …