量子コンピューター企業D-Waveシステムズは、従来機の2倍の演算能力があり、従来型のハードウェアと比べて非常に高速なコンピューターを発表した。しかし、D-Waveシステムズの最新モデルの価値を科学界の一部は認めていない。
D-Waveの新型量子コンピューター「2000Q」は、まさしく2000量子ビット(2進数のビットに相当し「キュービット」ともいう)の性能がある。D-Waveの旧型機はロッキード・マーチンやNASAとグーグルの共同ベンチャー等ですでに使われているが、2000Qの量子ビット数は従来機の2倍だ。
D-Waveは、最新モデルの性能が自慢だ。最適化問題のような量子コンピューターに特に適した問題で、最新機の性能を評価し、CPUとGPUに基づく従来型コンピューターで実行した類似アルゴリズムの性能と比較したところ、D-Waveの最新機は、ひとつのCPUと2500コアのGPUを備えたシステムと比べて、計算時間で少なくとも1000倍高速だという。
量子コンピューティングの専門家には、D-Waveの主張を疑う声もある。D-Waveの初代機が発表された時、本当に量子コンピューティングなのかと疑問を投げかけた科学者もいた。グーグルの研究者は昨年、D-Waveのデバイスが実際に量子コンピューティングで演算していること実証したと発表したが、MIT Technology Reviewのトム・サイモナイト記者が当時指摘したように、実証に使われたアルゴリズムは、性能比較に用いられた従来型コンピューターには不利だった可能性がある。
また、ネイチャー誌が説明するように、D-Waveが採用している量子ビットは比較的単純だが不安定であり、他の研究機関で開発中の量子コンピューターよりも量子の状態が簡単に失われてしまう。D-Waveが商業向け量子コンピューターを最初に生産できたのはこの単純な量子ビットのおかげだ。一方で、この比較的単純な量子ビットが原因で、量子コンピューティングが保証する計算能力の爆発的な飛躍をD-Waveのコンピューターが実現できることに疑問を持つ科学者もいる。
とはいえ、D-Waveの新しいコンピューターにはもう買い手がいる。D-Waveによると、サイバー・セキュリティ企業のテンポラル・ディフェンス・システムズがサイバー・セキュリティ・アプリケーションの開発用に1500万ドルで2000Qを購入したという。また、多くの研究グループがD-Waveの従来機を利用中だ。
一方、グーグルやマイクロソフト、IBM、多くの大学等の研究者は独自の量子コンピューターの開発に懸命に取組んでいるが、商業化には至っていない。商業向け製品について、D-Waveは量子ビット数を2年ごとに2倍に増やし続ける計画を明らかにしている。研究者が何を言おうとも、この計画は実施されるだろう。
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