医療デマと闘う医師たち、「反ワクチン」が次の主戦場に
米国で新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まったが、反ワクチン団体の偽情報も手伝って接種をためらっている人も少なくない。自身のワクチン治験の体験をソーシャルメディアに投稿して、ワクチンへの恐怖感を和らげようと活動する医療関係者もいる。 by Abby Ohlheiser2021.01.05
ヴァレリー・フィツューはこの4年間、よくニュースを見ていた。彼女の記憶によれば、人生の中でこれほどまでにニュースを注視したことがない。パンデミックが始まってからの数カ月間、ある事実がどの報道でも伝えられており、彼女はそのことについて考え続けていた。それは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの治験に参加している有色人種の被験者の数、特に黒人の数が十分でないということだった。それが、フィツュー自身が治験に申し込んだ理由だ。
フィツューは医師であり、ラトガース大学の病理学、免疫学、臨床検査医学の准教授でもある。だが、今回の治験に参加することについては、それらとは異なる感覚を抱いていた。
「この時代において、治験は私たちの人種が何年も前にされた実験とは違うということを、私と似た姿の人々に伝えたいと思いました」。しかしフィツュー医師は治験における黒人の不足を伝える報道を見続け、その原因を理解した。黒人系米国人は何世紀もの間、医療システムに非人道的に利用されてきた。タスキギー(アラバマ州)で実施された極めて非倫理的な研究では、黒人男性への梅毒の影響を観察するため、患者に治療をしないまま40年間観察が続けられた。政府の後押しで実行されたこのプロジェクトがメディアへのリークによって暴露され終了したのは、1972年のことだ。「私の父にとっては、生きている間の出来事です」。
最初のワクチンが全米の医療関係者に行き渡り始めた12月中旬、フィツュー医師は治験での体験についてツイートした。フィツュー医師が参加したのは二重盲検法による治験であったため、ワクチンが実際に接種されたかどうかはまだ分からない。同医師が自身の体験について語ったツイッターのスレッドには数千のリツイートと数万の「いいね」がついた。
https://twitter.com/DrFNA/status/1337814573341151235
フィツュー医師がツイートしたときには、偽薬もしくはワクチンのいずれかが合計2回、注射されていた。最初の注射は楽だった。2度目の注射の後、ワクチンの接種でよく起こる副反応が現れた。フィツュー医師はそのことについても語った。
https://twitter.com/DrFNA/status/1337814581452922881
https://twitter.com/DrFNA/status/1337814582757351425
「正しいことをしたかったので投稿しました」とフィツュー医師は話す。「重要なことだと思ったのです。ワクチン開発については『速すぎる、急ぎすぎている』という意見が多くあります。でも実際のプロセスは通常どおりだったということを皆さんに知って欲しかったのです。開発が速かったことは事実ですが、それはワクチン実用化のために百億ドルが投じられたからです」。
ソーシャルメディア上で影響力を持つ医師は、今回のパンデミックによって誕生したわけではない。だが、パンデミックのせいで影響 …
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