2020年の春、米国政府が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への対応を巡って時間を浪費する中、世界各国は接触追跡アプリの導入を進めていた。3月中旬のシンガポールを皮切りに、40カ国以上がデジタル曝露通知システムを立ち上げたが、その成果はまちまちといったところだ。
MITテクノロジーレビューのコビッド・トレーシング・トラッカー(Covid Tracing Tracker、以降、接触追跡トラッカー)は世界各国のアプリやアプリに使用されているテクノロジーを記録しつつ、プライバシーに関する懸念事項を指摘し、透明性を評価している。我々はトラッカーを定期的に更新し、状況の変化を記録している。例えば、いくつかの国でプライバシー対策が後退したことが判明したほか、アプリの停止や再導入、他のアプリへの切り替えといった変化だ。
新型コロナウイルスの検出機能をうたいながら、実際にはユーザーの情報を密かに集めていたイランのAC19アプリは、グーグルプレイ(Google Play)ストアで禁止となり、現在は使われていないようだ。他方で日本の追跡アプリは動作不良のために少なくとも2回、使用が中断された。日本は、2021年に開催延期となった東京オリンピックについて、新型コロナウイルス検査で陰性となり、追跡アプリをダウンロードしている外国人に限って入国を許可する予定だ。
当初は独自システムを開発していたが、グーグルとアップルが共同開発した通知システムが使えるようになったタイミングで切り替えた国もある。ノルウェーは最近、プライバシー面の懸念に対処してグーグル/アップルのフレームワークに切り替えた後、元のアプリと同じ名前の新しいアプリを再導入した。2020年初頭にフィンランドが開発した試験的なアプリも、グーグル/アップルのテクノロジーを使ったアプリに切り替わった。英国でも同様に、最初の試験的アプリは近くのアイフォーン(iPhone)を検出できない問題があると判明した後、廃止され、9月にグーグル/アップルのシステムに切り替わった(しかし、新しいシステムにも問題が生じた。11月に、ユーザーが感染者と接触した後、自己隔離を促す通知が送られないという問題が報告された)。
米国の各州が導入したアプリのいくつかも、導入時や再導入時につまずいた。例えば、ノースダコタ州とサウスダコタ州のアプリは、州独自のプライバシー・ポリシーに違反していた。そして米国の多くの州で、いまだに曝露通知アプリがまったく導入されていない。
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