KADOKAWA Technology Review
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露呈した食の脆弱性、
食料システムの再構築で
次の世界的危機に備えよう
Pablo Delcan
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Technology can help us feed the world, if we look beyond profit

露呈した食の脆弱性、
食料システムの再構築で
次の世界的危機に備えよう

遺伝子組み換えをはじめとする食料テクノロジーは、決して持続可能性と人類の幸福を脅かすものではない。新型コロナウイルスの流行で食料危機を経験した今こそ、技術がたもらす利益の分配を改める時だ。 by Fabio Parasecoli2021.01.04

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)初期に世の中に広がった食料不安を、簡単に忘れることはないだろう。空っぽになった商品棚、不足物資、そして買い溜めの広がりは、世界中で憂慮すべき現実となった。米国人は、こうした混乱は「一時的」なものであると聞いて安心した一方で、農家は畑に作物を埋め、酪農家は牛乳を下水に流し、食肉包装工場は閉鎖されているという気がかりなニュースも耳にした。そんな中、炊き出しやフードバンクの無料食料品配布を求める人の行列は長くなっていった。

結論から言うと、こうした障害は、私たちの食料システムに組み込まれた特性に起因していることが明らかになっている。学校やケータリング業者などの大口の買い手が一斉に購入を停止した場合、作物を収穫して加工するよりも、作物を廃棄するほうが安上がりだった。大量販売に向けて準備を進めていた酪農家には、包装機を一般消費者向けサイズの容器に移行する準備は整っていなかった。食肉包装工場は需要を満たすために操業を加速したが、そのためには加工ラインにできるだけ多くの作業員を密集させる必要があった。予想どおり、多くの作業員が新型コロナウイルス感染症にかかり、全米の食肉包装工場が閉鎖を余儀なくされた。

新型コロナの第一波の危機を通じて、相互に関連し合う食料生産・配送システムの内部構造とその弱点が、それまで気に留めたこともなかった多くの人々の目に明らかになった。言うまでもなく、このシステムは、世界規模の低温輸送ネットワークから、すべてを実行するための資本を提供する商品市場(高速インターネットおよび大規模なクラウド・コンピューティング基盤上で稼働する)に至る、数十年にわたる技術的進歩が作り出したものだ。パンデミックが進行する先には、世界中の何百万人もの人々の意表を突くさらなる苦しみが待ち受けているかもしれない。しかし、今は、どのように現状に到達したのか、そしてどのように状況を改善すればよいのかを検討するチャンスだ。

成長コスト

簡単に言えば、現代の食料システムは自由市場資本主義に内在する力の産物である。技術研究の投資先とその成果の適用先に関する決定は、効率、生産性、および利益のさらなる向上を目指して導かれてきた。

結果として長年の間、着実に生産量を拡大する方向へ進んできた。例として小麦の生産を見てみよう。鉄道、設備の改良、高収量品種の採用のおかげで、1870年代から1920年代の間に米国の小麦生産量は3倍に増加した。同様に、インドネシアのコメ生産量も、機械化されたハイ・インプット方式(水や肥料を大量に使用する方法)を採用した1970年代初頭の「緑の革命」以降、30年で3倍に増加した。

しかし、よく知られているとおり、20世紀初頭の米国における過剰生産は、広範囲にわたる土壌侵食とダストボウル(砂嵐)につながった。この収量増加へ向けた着実な歩みは、大量の肥料と農薬の使用、そして不都合だとみなされた在来種の切り捨てによって達成された。農地は少数の大規模農家の手の中に集中するようになった。2000年の米国の農場数は1900年の約3分の1、平均面積は3倍だった。同時期に、米国の労働者数における農業従事者の割合は40%強から約2%に減少した。サプライチェーンは、スピード、コスト削減、投資利益率の向上を目指して最適化され続けてきた。

消費者は過剰生産の流れに伴う利便性の向上をおおむね喜んできたものの、反発も起きた。世界中に流通している製品は、地元料理の伝統や文化的背景から切り離された無味乾燥なものに見えてしまうことがある。私たちは真冬にブルーベリーが手に入り、世界の隅々で同じブランドのポテトチップスを入手することができる。こう …

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