パーソナライゼーションは、ユーザーが使うアプリやWebサービス、デジタル・アシスタントを個人に合わせて最適化する機能のことだ。しかしパーソナライゼーションされたサービスを提供するには、個人に最適化するため、ユーザーに関するデータを大量に収集することになり、プライバシーの懸念がある。そこで研究者が有望な代替策を発案した。ユーザー情報に基づいて、ユーザーが興味を持ちそうなニュース記事を提案するが、パーソナル情報は一切サーバーに送信されないのだ。
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校とIBMの研究者が開発したPrIA(Private Intelligent Assistant)には、ノートPCとアンドロイド・スマホが1台ずつ必要だ。ノートPCとスマホでユーザーのツイッターや フェイスブック、Chromeからデータを収集し、ユーザー・プロファイルを作成する。プロフィル情報はクラウド上ではなく、オフライン状態でローカルに保存される。たとえば、ノートPC側のアプリがGoogleアカウントにログインしない状態でGoogleニュースからニュース記事をダウンロードしたとしよう。ノートPC側のアプリは、ユーザーが所有する機器にだけ保存されたプロファイル情報に基づいてユーザーが読むはずの記事を選んで推薦リストを作成し、スマホ側で動作するアプリに送信する。
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のアルナ・バラスブラマニアン准教授(コンピューター科学)は「重要なのは、ユーザーの嗜好はユーザー自身の携帯電話とノートPCにしかないことです」という。バラスブラマニアン准教授は、開発プロジェクトに関する論文の筆頭著者で、プロジェクトはカリフォルニア州ソノマで2月に開催されるモバイル・コンピューティング会議で発表予定だ。
アプリの推薦機能の精度を調べるため、協力者6人のノートPCとスマホにアプリをインストールし、Googleニュースの記事の推薦結果と比較する小規模な調査を研究者が実施したところ、10日間の調査で、アプリによる推薦結果はGoogleニュースより14%ほど評価が低かった。バラスブラマニアン准教授は「これはやむを得ない代償です」という。
しかし、アルゴリズムを調整し、ユーザーに関するもっと多くのデータ(電子メールなど)を参照すれば、ユーサーの個人情報を機器内から出さずにサービスを改良できる余地がある、と研究者は考えている。