新型コロナワクチンが、いよいよやって来る。英国は12月2日、欧米諸国で初めて新型コロナウイルス(SARS CoV-2)ワクチンの緊急使用を承認した。第3相試験を完了したファイザーとバイオンテック(BioNTech)のワクチンを使用する。だが、今後数日間あるいは数週間のうちに、米国や欧州連合(EU)をはじめ、多くの国々が英国に続くと予想されている(日本版注:米国は11日に緊急使用許可を出した)。ワクチンの到着が目前に迫っているということは取りも直さず、各国が揃ってワクチンの配布という物流上の大きな課題に直面するということだ。しかも、最も有望なワクチン2種には超低温保管が必要なことが、この課題をますます厄介なものにしている。各国の課題はそれだけではない。ワクチン接種の優先順位の決定という難題にも取り組まなければならない。
ここでは、各国が国民へのワクチン配布方法をどのように決定しているかについて、いくつかの国の例を取り上げる。
米国
何回分が利用可能となるか?
ロイター通信によると、米国では2020年末までに最大4000万回分のワクチンが供給される見込みであり、そのうち2500万回分はファイザー・バイオンテックから、1250万回分はモデルナ(Moderna)から出荷される。ワクチンはそれぞれ数週間の間隔をあけて2回接種する必要があるため、この量だと2000万人の接種が可能となるが、出荷分が全部一度に届くわけではない。初回の出荷は320万人分で、その後、毎週500万から1000万人分のワクチンが届けられると伝えられている。
接種の優先順位は?
米国では、各州が独自のワクチン配布計画策定の責任を任されている。どの州の計画も、米国疾病予防管理センター(CDC)による暫定的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)計画書内の一般的なガイダンスに従うことになっている。CDCによる計画書の策定にあたっては予防接種実施諮問委員会(ACIP)の意見が大きな役割を果たしており、全米アカデミーズの意見も取り入れられた。
ACIPは12月1日に会合を開き、推奨分配計画の第1段階について採決した。これは「1a」と呼ばれるもので、医療従事者2100万人と老人ホームなどの長期介護施設に入居している、特に脆弱な成人300万人を優先対象とすることになる。
段階が進むにつれ、残りの集団が優先リストに追加されていく。1bでは、学校職員などのエッセンシャルワーカー(社会的機能に必要不可欠な業種の労働者)が優先され、1cでは、65歳以上の成人や、新型コロナウイルスに感染すると重症化のリスクが高まりやすい基礎疾患者が優先される。
第2段階では、学校や交通機関、老人ホームなどの入居施設、人が密集する場所で働く人が対象となる。第3段階では、スーパースプレッディング(超拡散)を阻止する狙いで若年成人と子どもを対象とするほか、第1、第2段階で対象となっていなかったエッセンシャルワーカーが対象となる。第4段階では、残り全員が対象となる。
だが、このCDCのガイドラインの解釈や実施については、州や地方自治体がその多くを任せられている。
第1段階で …