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おかえり「はやぶさ2」、リュウグウのサンプルが地球に到着
JAXA
Japan is about to bring back samples of an asteroid 180 million miles away

おかえり「はやぶさ2」、リュウグウのサンプルが地球に到着

日本時間の12月6日、はやぶさ2が投下する小惑星リュウグウのサンプルを詰めたカプセルがオーストラリアに到着する。太陽系の成り立ちの解明に資するだけではなく、今後の日本の宇宙ミッションにも大きく貢献するだろう。 by Neel V. Patel2020.12.05

12月5日、地球は文字通り我々の世界にはないもの、つまり約2億9000万キロメートルかなたの小惑星で採取した小さな粒子や塵を受け取ろうとしている。無事に地球に到着すれば、小惑星リュウグウの破片は、科学者が太陽系の成り立ちの詳細を研究するのに役立つだろう。

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、6年前の2014年12月3日に「はやぶさ2」を打ち上げた。その4年後の2018年7月にリュウグウに到着したはやぶさ2は、光学カメラ、赤外線カメラ、ライダー(LIDAR:レーザーによる画像検出・測距)といった数種類の機器を使って、直径約900メートルのリュウグウを軌道上から調査した。また、リュウグウの地表にさまざまな機器を使って間近で調査する3台の小型探査車(ローバー)を配備した。

こうした調査のすべてが、科学者がリュウグウをよりよく理解するのに大いに役立った。リュウグウは、炭素を豊富に含む原始的な岩石だが、当初の予測よりも多孔質な物質で覆われており、含水鉱物の含有量が少ないことが分かった。リュウグウは小惑星としてはもっとも一般的な種類だが、あまりにも暗いため、望遠鏡での研究は困難だ。はやぶさ2で実施したような観測でも、宇宙へ送れる機器の種類は限られており、また、これらの機器が必ずしも宇宙の旅に持ち堪えられるとは限らないため、観測には限界がある(事実、はやぶさ2の3台の探査車のうち1台は、リュウグウに配備する前に故障した)。

しかし、地球上の最先端の研究所における分析に匹敵するものはない。はやぶさ2の最大の目的は、リュウグウのサンプルを地球に持ち帰ることなのだ。

サンプル・リターン・ミッションは、米国航空宇宙局(NASA)のオサイリス・レックス(OSIRIS-REx)ミッションや中国の嫦娥5号による月面での掘削が証明しているように、ますます盛んになってきているが簡単なことではない。2019年2月、はやぶさ2はリュウグウの表面に2発の小さな弾丸を撃ち込んだ。舞い上がった粒子を、接地(タッチダウン)したはやぶさ2のサンプル収集アームで採取できるようにするためだ。はやぶさ2は、同年4月にさらに大きな弾丸を発射し、その数カ月後には地表に接地してさらに多くの舞い上がった岩石の破片を回収した。

惑星へ到達してサンプルを収集するといった方法を使った1回目のはやぶさミッションでは、サンプルを100万分の1グラムしか持ち帰ることができなかった。しかし、はやぶさ2ではもっと多くのものを持ち帰れるだろうと楽観的に考えられている。「サンプルを収集したカプセルの大気圏再突入が成功するかどうかはまだ分かりませんが、この成功を誇りに思っています」とはやぶさ2のデータを直接扱ってきた、スペインのラ・ラグーナ大学の惑星科学者、巽瑛理(たつみ・えり)博士は話す。

小惑星は惑星(内部の加熱と磁場、そして大気がその継続的な活動を刺激している)と比べて、長期間にわたって物理的・化学的組成がはるかによく保存されているため、古代宇宙史のタイムカプセルのようなものだ。今回の場合、リュウグウのサンプルを研究することで、さまざまな小惑星や月、地球のような居住可能なものを含む、大量のガスや塵が集まった初期の太陽系がどのようなものだったのかを理解できる。

「我々が知りたいのは、太陽系がどのようなプロセスを経て形成されたのかということです」と巽博士は言う。「私は、もしリュウグウに生命の構成要素があるのなら、どのような種類の有機物があるのかを知りたいのです」。巽博士は、リュウグウのサンプルを研究することで、科学者が「初期の太陽系の物質」や、隕石の衝突で原始地球に降り注いだ元素や化合物に関する知識を深められると考えている。リュウグウ自体は、現代の地球の大気圏に突入すると形が残らないほど壊れやすいため、これまで地球上で分析できた隕石とはかなり異なる可能性が高い。

また、リュウグウの歴史には、実験室でしか得られないような種類の経過分析を必要とする特異なものがある。東京大学の惑星科学者、諸田智克准教授は、はやぶさ2のカメラで撮影した画像を使ってリュウグウの地表を調査したチームを主導していた。研究チームは、太陽熱による表面の変化に気づいた。「リュウグウが太陽近くの軌道を周回していた可能性が推測できます」と諸田准教授は話す。岩石の破片を詳しく観察することで、実際にそうだったのかを確認できる可能性がある。

はやぶさ2は、数日後にリュウグウから採取したサンプルが入ったカプセルを投下する。このカプセルは、オーストラリアに着陸する前に、激しい大気圏の再突入を乗り切らなければならない。はやぶさ2はその後、2026年7月の小惑星2001 CC21のフライバイ、2031年7月の小惑星1998 KY26とのランデブーへ向けて再出発する。これら2つの大きなミッションの間に地球を2回周回しながら、遠方の太陽系外惑星の観測をする予定だ(日本版追記:6日、カプセルはオーストラリアで発見、回収された)。

はやぶさ2の成功は、今後のサンプル・リターン・ミッションにも活かされるだろう。JAXAは火星衛星探査計画(MMX:Martian Moon eXploration)と名づけられた、火星の衛星フォボスのサンプル・リターン・ミッションを計画している。「MMXは、はやぶさの初代と2号が築いてきた多くの技術的資産を受け継いだものです」と巽博士は話す。「また、はやぶさ2のプロジェクトには、次世代のミッションを担う若い科学者や技術者が多く参加しています。このような経験を積むことで、JAXAは将来、より複雑で大きなミッションを計画・始動できるでしょう」。

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ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
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