英国規制当局は12月2日、ファイザーとドイツのバイオ医薬ベンチャーのバイオンテック(BioNTech)が共同開発したの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを承認した。新型コロナウイルスのワクチンを緊急承認した世界初の国となる。英国は、今年から2021年にかけて使用予定のワクチン4000万回分を購入する契約をすでに結んでおり、その第一弾は数日中に到着する見込みだ。ワクチンは2回接種する必要があるため、2000万人に接種できる量だ。両社によると、ワクチンを公平に配分できるように、購入契約をした各国に対して段階的に配送する。米国と欧州連合(EU)も12月中に、ワクチンを緊急承認する見込みだ。
英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、ファイザーとバイオンテックの治験から得られたデータがすべてそろってから審査するのではなく、迅速化のためデータが届いた順番に審査した。データのなかには、ワクチンの有効性が95%だと判明した第Ⅲ相臨床試験のデータも含まれていた。ファイザーは、4万4000人のボランティアから得られた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した170例のうち、プラセボ群(偽薬投与グループ)からの発症は162例、ワクチン群は8例だったと報告した。ファイザーによると、同研究においてワクチンの安全性に関する重大な懸念は確認されなかった。副作用として倦怠感や頭痛が含まれているが重大なものではなく、主に若い被験者に影響があった。バイオンテックのウグル・サヒンCEO(最高経営責任者)兼共同創業者は、「英国におけるワクチン接種プログラムの展開により、重篤化が懸念される人たちの入院が減少するでしょう」と語った。通常、ワクチンの開発には数年かかるが、今回は10カ月しかかからず、これまでに開発されたワクチンとしては最短となった。
ワクチンが承認されたことで、膨大な量の配布という作業が開始される。今回の作業が特殊なのは、輸送中のワクチンを-70°Cに保たなければならないことだ。ファイザーとバイオンテックは、ワクチンを超低温で保てるように、ドライアイスを使った容器を開発した。英国は、歴史上最大のワクチン接種キャンペーンで重大な局面を迎えている。英国政府は、高齢者と重症化しやすい患者に接種を開始する計画を立てた。優先リストを作成し、介護施設の居住者、80歳以上の人々、医療従事者と介護などの社会福祉に従事する人々を優先すると決定した。より多くのワクチンが入手できるようになった場合、50歳以上のすべての人と持病のある若年層に対して接種を開始する。英国の国民医療制度、国民保健サービス(NHS)は、順番が来た人々に連絡して、接種のために施設に来てもらう予定だ。