アストラゼネカ(AstraZeneca)のパスカル・ソリオット最高経営責任者(CEO)は、オックスフォード大学と同社が共同開発した新型コロナウイルスワクチンについて、新たに世界的な治験をする予定であるとブルームバーグに語った。以前は、すでに実施した米国での治験の補強をするに留まるものと見込まれていた。同社はこれまで、同ワクチンの治験データの収集と提示の方法について批判を受けており、今回のソリオットCEOの発表はそうした最中になされた。
オックスフォード大学とアストラゼネカによるワクチンが、新型コロナウイルス(SARS CoV-2)に対して最大90%の有効性があるという11月23日の発表は、大きな反響を生んだ。このワクチンは、肯定的な結果を報告した3番目のワクチン候補である。モデルナ(Moderna)のワクチン候補や、ファイザーとバイオンテック(BioNTech)が共同開発したワクチン候補よりも安価で、冷蔵庫並みの温度で保管できるため、とりわけ貧困国に対して有望な存在とされてきた。
しかし、ブラジルと英国における治験で同ワクチンの全体的な有効性が62%から70%であったと指摘され、有効性90%というアストラゼネカの主張は疑問視されるようになった。さらに90%という数値は、ミスによって低用量を投与されたわずか3000人未満の被験者で達成されたものだった。研究チームは、偶発的な低用量のほうが効果が大きいと証明された理由について説明できていない。
そのためアストラゼネカは、この低用量の投薬のみを検証する別の治験を計画している。ソリオットCEOはブルームバーグに対し、「より有効性が高い可能性のあるケースが見つかったために検証しなければなりません。追加試験が必要です」と語り、有効性が高いため、必要な参加者はより少なくてすむだろうとも話した。
低用量を投与したグループには、55歳以上の被験者が一切含まれていなかったことも懸念されている。したがって2回目の治験は、高齢者層に対するワクチンの有効性を検証するものでなくてはならない。また、米国食品医薬品局(FDA)は、ワクチンに承認を与えるうえで、より広範な人種、年齢、性別を対象とした、より多くのデータを要求することも考えられる。最初の治験の完全な査読済みデータは、医学雑誌の『ランセット(Lancet )』に近日中に掲載されることになっている。