中国の月探査機「嫦娥5号」が着陸成功、採取開始へ
中国初のサンプルリターンミッションである「嫦娥5号」は12月1日に、月の「リュムケル山」付近への着陸に成功した。着陸機は、地球へ持ち帰る月の岩石や土壌を採取するため、間もなく採掘作業を開始する。 by Neel V. Patel2020.12.03
中国の月探査機「嫦娥(じょうが、Chang’e)5号」は12月1日(米国東部時間、以降同)、月面への着陸に成功した。嫦娥5号は、中国初の「サンプルリターン(試料持ち帰り)」ミッションの一環として、月の岩石や土壌を採取して地球に持ち帰る予定だ。
中国は11月23日に嫦娥5号を打ち上げた。そして11月29日、月周回軌道を周回中に、探査機を2つの部分に分離した。軌道にとどまる周回機および帰還カプセルの部分と、数日後に月面を目指すことになる着陸機および上昇機の部分である。
着陸機は、12月1日の午前10時13分頃、月の表側の西端の「嵐の大洋(Oceanus Procellarum)」にある火山性丘陵「リュムケル山(Mons Rümker)」付近に着陸した。このエリアには、アポロ計画で持ち帰られたものよりも数十億年新しい年代の岩石があると考えられている。着陸機はすぐにも、地中の試料を求めて月面採掘を開始すると思われる。
今回のミッションでは、月から少なくとも2キログラム程度の試料を採取することを目指している。そのうち4分の1は地中約2メートルの深さから、残りの4分の3は地表面から採取する予定だ。先代の嫦娥4号の月面探査機とは異なり、同5号には精密な機器を月の夜間の極寒環境から保護できるような加熱装置がない。すなわち、(比喩的な表現だが)機器が凍死してしまう前に、月の昼間に相当する14日の間に試料を採取する必要がある。
着陸機が月の試料の採取を終えたら、約48時間以内に上昇機がその試料を上方へ運び、周回機とランデブーする。周回機はその後、帰還カプセルに試料を収納して数日後に地球を目指し、地球に近づいたところで帰還カプセルを放出する。帰還カプセルは12月17日までに内モンゴルに着陸する予定だ。
月探査ミッションは中国にとって初めての試みではない。これまでに月のロボット探査を4回成功させており、そのうち2回は月面に探査車を送っている。嫦娥5号は3度目の月面着陸となるが、サンプルリターンミッションは初めてだ。これまで月の岩石を地球に持ち帰ったのは米国と旧ソ連のみであり、嫦娥5号のミッションが成功すれば、月の試料が地球に持ち帰られるのは、旧ソ連の「ルナ2(Luna)4号」ミッション以来44年ぶりとなる。
中国の次の月サンプルリターンミッションである「嫦娥6号」は、2023年の打ち上げを予定している。嫦娥6号は表向きは同5号の予備機とされているが、今回のミッションが成功すれば、リュムケル山へは行かず月の南極でサンプルを採取することになる。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。