ジョー・バイデン次期大統領が、新たに設けられた気候変動担当の大統領特使にジョン・ケリー元国務長官を任命した。次期政権が気候問題に対して国際協調を重視していることや、その戦略的な重要性を認識していることを明確に示す人事だ。
ケリー元国務長官は米国の外交を担ってきた大物政治家である。オバマ政権時代には画期的なパリ気候協定をまとめるのに一役買い、上院議員として国内の気候政策を強力に推進した。
「我々が直面している最も喫緊の国家安全保障上の脅威の1つである気候危機に、米国が再び対処するため、ケリー元国務長官に政府への復帰をお願いしました」とバイデン次期大統領は11月23日の声明の中で述べた。「こうした役職は初めてのものであり、閣僚レベルでは初の気候担当となります。気候変動担当者の席が初めて国家安全保障会議の場に設けられることになります」(同)。
「気候担当大統領特使」としてのケリー元国務長官の任命は、バイデン次期大統領の政権移行チームが11月23日に発表した6つの閣僚レベル人事の中でも最初の方に発表された。ドナルド・トランプ大統領は選挙結果を受け入れようとしていないが、政権移行チームは政権発足を目指している。一部の閣僚人事とは異なり、気候担当大統領特使に上院の承認は必要ないとニューヨーク・タイムズは報じている。
バイデン次期大統領が選挙期間中に示した意欲的な気候政策と相まって、11月23日の人事は気候変動に対する米国の新たな取り組みを示すものであり、トランプ大統領の政策から180度の転換となる。トランプ政権はパリ協定から離脱し、環境保護にほころびを生じさせ、米国の国際協調体制を常に歪ませてきた。
コロンビア大学の世界エネルギー政策センター(Center on Global Energy Policy)のヴァルン・シヴァラム上級研究員は、今回の人事は、気候変動を国家安全保障および外交政策の中心に据える次期大統領の意思を示すものだとツイートした。シヴァラム上級研究員はさらに、新政権が気候変動の脅威を認識し、国際協力によって対処していくことを、同盟国と敵国の双方に示していると付け加えた。