米国の2020年のCO2排出量、パンデミックで昨年比9%減
持続可能エネルギー

US emissions plummeted this year – for all the wrong reasons 米国の2020年のCO2排出量、パンデミックで昨年比9%減

米国の2020年の温室効果ガス排出量は、昨年に比べて9%ほど下落する見込みであり、ここ30年間では最良の水準となる。しかし、この減少は主に、新型コロナのパンデミックに起因する経済不況によるものであり、経済活動の回復と共に急激にリバウンドする可能性が高い。 by James Temple2020.12.11

ブルームバーグNEF(BNEF)によると、米国の2020年の温室効果ガス排出量は、昨年に比べて9%ほど下落する見込みだ。実現すれば、少なくとも直近30年間で最良の大気汚染水準を記録することになる。

しかし、これはよいニュースではない。2020年の劇的な減少は、ほぼ完全に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに起因する経済不況によるものであり、米国の政策や行動、習慣の本質的かつ持続的な転換によるものではない。

BNEFの予測によれば、新型コロナウイルス感染症の流行がなければ温室効果ガス排出量は2020年には1%ほどしか減少しなかっただろうという。その要因は主に、石炭からの継続的な脱却政策によるものだ。この事実は、新型コロナのパンデミックが過ぎ去り、経済活動が回復したのちには、同排出量が急激にリバウンドする可能性が高いことを示している。

2020年に地球温暖化ガス排出量の減少率が最も高かったのは輸送部門であり、14%減少したとBNEFの報告書は伝えている。電力と産業部門による大気汚染はそれぞれ、11%、7%の減少率を示した。

2020年において付言しておくべきポイントとして、米国西部で発生した大規模な山火事がある。これによって、2019年の山火事と比べて2億トンもの二酸化炭素が余計に排出された。この点を考慮すると、2020年の温室効果ガス排出の削減量は6.4%にまで縮小されるとBNEFは推定している。

今年の排出量減少を、気候変動を減らすために大衆が行動と習慣を急速に変化できている肯定的な兆候であると強調した人々もいる。しかし実際のところ、その主たる要因は、出勤したり、友人や家族と会ったり、あるいは世界のさまざまな場所に自由に移動したりできなかったせいなのだ。そうしたことを永遠に諦める人間などほとんどいないだろう。

他の理由としては、人々の失職、収入や財産の減少、食料や日用品に対する支出の縮小、あるいは病気にかかったり死亡したりすることも含まれる。

我々は消費を抑制したり、人々の困難を当てにしたりして気候変動を解決することなど望まないはずだ。エネルギー生成や食料生産、人間や製品を自由に移動させるための方法をクリーンにすることによって実現しなくてはならない。BNEFの出した数字はまた、我々がそうした変革をやっと始めたばかりであることを示している。