大統領選はまだ終わらない——異例づくしで強くなった米国の選挙
今回の大統領選挙は、おおむね想定通りに進んでいる。懸念されていたパンデミックは逆説的にシステムを強くし、安全性や完全性、投票率という面で、2020年の選挙は近年のどの選挙よりも優秀だったと総括できるだろう。 by Patrick Howell O'Neill2020.11.10
選挙プロセスは機能している。
ドナルド・トランプ大統領は「混乱が起こっている」という筋書きを長い間にわたって世間に押し付けている。その内容は、今回の大統領選挙には致命的な欠陥があり、不正行為が横行し、トランプ大統領以外に信頼できる存在は何もないというものだ。だがそれを裏付ける証拠は何もない。票の集計結果がますますトランプ大統領に不利になる中でも、米国の実際の選挙システムは問題なく機能し続けている。
2020年の選挙は異例づくしだ。その理由はもちろん、2020年という年自体が異様な状況に満ちていたからだ。通常よりも集計に時間がかかっているという事実からは否応なしにストレスを受ける。だがそれこそがまさに、すべての票を数える際に想定されることであると当局や専門家が何か月も前から述べてきたことなのだ。
「これまでの選挙の進み具合は素晴らしいと思っています」。「民主主義を守るための連合(Alliance for Securing Democracy)」で選挙完全性フェローを務めるデビッド・レビンはそう語る。「国全体が、州および地元の選挙管理委員会に大きな大きな感謝を表すべきでしょう。外国の干渉や新型コロナウイルスのパンデミック、市民の不安といった事情があり、率直に言って連邦政府からの支援も十分ではなかったにもかかわらず、選挙管理委員会と緊密に連係した人々についても同様です。満足の行く程度には良い選挙になりました」。
あらゆる基準に照らして、安全性や完全性、投票率という面で、2020年選挙は近年のどの選挙よりも優秀だった。まず、選挙インフラの安全性が高まった。国土安全保障局(Department of Homeland Security)が、ハッカーによる侵害を職員に知らせる「アルバート(Albert)センサー」を選挙システムに導入したのだ。国家安全保障局はハッカー集団を積極的に追跡し、全国の職員に情報を提供している。 選挙管理委員会は紙によるバックアップ・シス …
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