高速電波バースト(FRB:fast radio burst)は、天体物理学の中で最も不可解な謎の1つだ。高速電波バーストのパルスは持続時間が5ミリ秒未満だが、太陽が数日から数週間かけて放つエネルギーよりも多くのエネルギーを放出する。2001年に初めて観測(2007年に公表)されて以降、科学者は何十回も高速電波バーストを発見した。ほとんどは1度限りの信号だが、反復する場合もあり、一定周期で脈動するものもある。
しかし、高速電波バーストの正確な発生源が何であるのかは、ついぞ説明されていなかった。これまでに宇宙の特定の領域に局在していたバーストは5つのみで、それらはすべて天の川銀河の外側で発生したものだった。信号がはるか彼方からやって来る場合、発生源となる天体を見つけるのは非常に難しい。銀河や中性子星の衝突とする説が多いが、中には宇宙人のしわざとする説まである。
ネタバレとなってしまうが、高速電波バーストは宇宙人のしわざではない。11月4日付のネイチャー(Nature)誌に掲載された最新の2つの論文は、強い磁場を持つ中性子星、すなわち「マグネター」が高速電波バーストの発生源の1つであると強く示唆している。さらに、考えられていたよりはるかに多くの高速電波バーストが発生している可能性が高いことも示した。
マギル大学の天体物理学者でネイチャーの1つ目の論文の共同著者であるダニエル・ミチリ博士研究員は次のように述べる。「すべての高速電波バーストがマグネターから発生しているとは断定できませんが、マグネターが発生源だとするモデルは、ほぼ間違いないと考えています」。
4月28日、2つの望遠鏡が新たな高速電波バーストの信号を検出した。検出したのは「チャイム(CHIME:Canadian Hydrogen Intensity Mapping Experiment、ブリティッシュコロンビア州にあるカナダ水素強度マッピング実験望遠鏡)」と「ステア2(STARE2:Survey for Transient Astronomical Radio Emission 2、カリフォルニア州からユタ州に配置された3つの小型無線アンテナ)」だ。「FRB 200428」と名付けられたこの信号は、太陽が30秒で放出するよりも多いエネルギーの電波を1ミリ秒で放出していた。
CHIMEが最初に高速電波バーストを検出したのは自然な成り行きだった。CHIMEは …