KADOKAWA Technology Review
×
12/16開催 「再考ゲーミフィケーション」イベント参加受付中!
President Trump Takes Immediate Aim at Obama’s Climate Action Plan

トランプ政権、ホワイトハウス公式サイトから気候変動対策を削除

ドナルド・トランプ大統領の就任直後、ホワイトハウスのWebサイトから気候変動とクリーン・エネルギーのページが削除された。 by James Temple2017.01.21

トランプ新政権は早々に、オバマ大統領とは全く異なるエネルギー政策の方針を立てることを明らかにした。1月20日、ホワイトハウスのWebサイトに、ドナルド・トランプが米国第45代大統領として就任した直後に、「米国第一エネルギー政策計画(An America First Energy Policy Plan)」と題する新しいページが登場した。この計画でトランプ大統領と新政権の役職に就いた者は、気候規制の廃止と石炭、石油、ガス生産の増加を目指すと断言している。

これ見よがしに、気候変動のページは削除された

新計画では、太陽エネルギー、風力エネルギー等の持続可能なエネルギーには一切言及していない。最も近いのは「クリーン・コール・テクノロジー」採用の表明だが、クリーン・コールはコスト効率のよい方法なのか実証されていない。

A new path for energy policy.
エネルギー政策の新しい道

「あまりにも長い間、私たちはエネルギー産業に対する面倒な規制によって引き止められてきました。トランプ大統領は、気候行動計画やクリーン・ウォーター連邦法など、有害で不要な政策を排除することを公約します。こうした規制を撤廃することは、アメリカの労働者の大きな助けとなり、今後7年間で賃金が300億ドル以上増えることになります」と、新たなページは述べている。

オバマ大統領の気候行動計画では、温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーの増強、エネルギー浪費の削減、天然資源の保護、気候変動の影響に対する国家的準備が求められていた。水についても、環境保護庁(EPA)と陸軍工兵部隊(COE)の保護下にある河川、湖、湿地へと規制範囲は大きく広がった。

「この規則は、水質清浄法が保護する水域についてビジネスと産業が知るべき内容を明快に確実に伝え、さらに故意に水域を脅威にさらす汚染者に対して責任を問えるようにします」と、オバマ大統領は、法案が可決した時に声明の中で述べた。

新エネルギー計画には、トランプ大統領は、EPAを大気と水の保護というEPAの「本質的な任務」に「再集中させる」とも書かれている。つまり、トランプ大統領は、EPAに温室効果ガス排出量を規制することから手を引くように指示するつもりなのだ。保守派や化石燃料の利害関係者は、オバマ政権による規制を範囲の広げ過ぎとして大批判していた。

新計画は、石炭産業を活性化させるトランプ大統領の選挙公約を繰り返している。しかし専門家は一貫して、石炭産業の主な課題は政府の規制ではなく、天然ガスの安価な価格と競争できない石炭産業の能力不足が問題だという。新政権は、未利用埋蔵量は推定約50兆ドルだという、シェールオイルとガス田の探査(連邦政府の所有地を含む)を劇的に増やそうとしている。エネルギー生産による収益(恐らく連邦土地賃貸借からだろう)は「道路、学校、橋、公共インフラの再建」に利用すると付け加えている。

「米国第一エネルギー政策計画」は、ザ・ヒル(米国の政治専門紙)の報道の翌日に発表された。ザ・ヒルの記事によれば、トランプ政権は、エネルギー省の予算を劇的に削減しようとしている。つまり、再生可能エネルギーと二酸化炭素貯留研究の資金が削減される可能性があるのだ。

新計画には重大な危険がある。化石燃料の探査を促進し、再生可能エネルギーへの移行を遅らせれば、世界が劇的に温室効果ガスの排出量を削減する必要があるちょうどその時期に、排気量が増加してしまう。

二酸化炭素等の排出物が、地球を急速に温暖化させ、海面を上昇させ、極氷を溶かし、海洋を酸性化させることは、もはや圧倒的な科学的コンセンサスがある。今週初め、国立海洋大気庁(NOAA)と米国航空宇宙局(NASA)は、2016年は史上最も暖かく、3年連続で新記録を更新したことを確認した

人気の記事ランキング
  1. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #31 MITTR主催「再考ゲーミフィケーション」開催のご案内
  3. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る